世界の底流  
イラク戦争の民営化
2004年5月15日

3月31日、ファルージャで4人のアメリカ人が殺害され遺体が傷つけられた事件、さらに5月12日、インターネット上で発表された米人首切り事件、そして、最近マスコミに発表されたアブグレイブ刑務所でのイラク人捕虜の尋問事件などによって、イラク戦争では多くの民間企業が軍の仕事を請け負っている事実が明らかになった。

4月23日『Focus on the Corporation』のWeb Siteに掲載されたRobert Weissman(Multinational Monitorの代表)の「モンスター企業軍隊の出現」と題する記事によると、今日、イラクで米軍と契約している民間企業の数は15,000社に上っているという。Weissman はこれを「モンスター企業軍隊」と呼んでいる。

米軍が戦争を遂行する際に、これほどまでに民間企業に依存したことはかってないことであった。ファルージャ事件の犠牲者もアブグレブ刑務所の拷問官もこのインフォーマルな企業占領軍であった。

彼らは民間業者であるということで、軍の規律に縛られず、命令系統からも外れている。また軍隊内では行ってはまらない暴力行為についても報告義務がない。人権侵害が起こっても罰せられることはない。しかも契約時にはこれら業者の審査は全く行われないし、競争入札もないので、莫大な金額を吹っかけることができる。これはイラク戦争の軍事費が財源であって、米国民の税金である。

今日、イラクではこのような企業軍隊が独立した存在になっている。少なくとも、米軍の指揮系統下にはない。そして民間軍隊の数が増えるにうれてその政治的影響力も強まっている。そして彼らは改革を妨害している。

もともと米軍の軍事規律は不備だし、またそれが実践されることにいたっては難しいのだが、しかし、それでさえ、この現代の「傭兵」には適用されない。これら企業が群と契約する時、占領地での住民の取り扱い方、捕虜の処遇、あるいは人権問題などについての就業規則はない。
彼ら軍事企業にどの法律が適用されるか不明だ。彼らは傭兵についての既存の国際法も提供されない。また米国の国内法も提供されない。なぜなら、イラクで活動している軍事企業はアメリカ人企業だが、会社は米国籍ではないことが多い。

イラク戦争以前にも、軍事企業はボスニアとコロンビアで活動した例がある。たとえば、Dyncorpy社の社員がボスニアの若い女性を誘拐し、売り飛ばした事件はあまりにも有名である。またコロンビアでは、米正規軍の代わりに軍事企業の軍隊がコロンビア政府軍と共同でゲリラの掃討作戦を行っている。米議会がコロンビアでの米軍の行動を規制しているからである。

一方、イラクにおいては、全く新しい状況が展開されている。イラクで住民の反乱がエスカレートするにつれて、治安担当の軍事企業が全面的な戦闘を展開している、ファルージャでアメリカ人が殺害された直後、Blackwater Security Consulting社はナジャフで全面的な戦闘を開始した。銃弾が飛び交う中で、同社所有のヘリが、同社のコマンドを運んだ。

『ワシントン・ポスト』紙は、軍事企業がネットワークを形成しつつあることを報じている。「彼らは独自のレスキュー部隊を備え、精度の高い情報網を持ち、世界最大の私的軍隊になっている。」そして「イラクでは多くの民間企業は、米軍ではなく、暫定統治機構と契約しているため、米軍の作戦の指揮下にはない。なぜなら、イラク警察が不意打ち攻撃を受けても、米軍をあてにできないので、どうしても民間企業に頼らざるを得ないのだ」

イラクでは、このように前代未聞の事態が起こっているのだが、さらに悪いことに、モンスター化した軍事企業の自己拡張していることだ。軍事企業が大きくなればなるほど、議会やペンタゴンに影響力を増大させ、政策立案の力を拡大していく。

軍事企業の経営陣には元将軍がいる。彼らは現役の将軍の先輩であり、ペンタゴンではこれより強いロビイストはいない。

軍十企業は買収、合併を繰り返して、肥大化している。たとえば、有名な軍需産業のNorthrop Grummans社は多くの軍事企業を吸収している。議会でもペンタゴンでもシビリアン高官の中にさえ影響力を強めている。

このような軍事企業の活動が顕著になったのは、90年代以降である。彼らは規制もされず、野放しになってきた。現在、彼らはもはや手に負えないモンスターになってしまった。これは戦争という究極の民営化である。