世界の底流  
ブッシュ大統領の鳴り物入りのエイズ資金の実態
2004年3月10日


 昨年1月、ブッシュ大統領は、年頭教書で「米国は、向かう5年間に海外のエイズの予防、治療薬の供与、エイズ患者と孤児のケアのために150億ドルを支出する」と宣言した。1年後、このブッシュ・イニシアティブはやっと動きだした。
 ブッシュはEli Lilly製薬会社の社長であったRandall Tobiasをグローバル・エイズ・コーディネーターに任命した。Tobias は精力的で、有能な管理者といわれる。
 彼は、今年の予算として、3億5000万ドルを支出すると、発表した。
これについて、ワシントンに本部を置く「グローバル・エイズ同盟(GAA)」は、いくつかの問題点を指摘している。

1) この資金が、ブッシュの政治資金源を潤すのではないかという危惧がある。なぜ
なら、国連が設立し、すでに高い評価を受けている「エイズ、結核、マラリア撲滅グローバル基金」に拠出するのではないからである。
ブッシュ政権は、Tobias の事務局を設置するのに、1年もかけた。そして米国は、途上国がエイズ・プログラムを実施するのを技術面で支援するのだという。これは単にグラントを拠出する国連のグローバル基金と比べた場合、優れているかも知れない。しかし、この米国のやり方には、欠陥もある。Tobias 局長は、資金をアフリカ人のグループにではなく、米国の契約者に供与する。しばしば、米国の契約者はアフリカ人に比べて高い料金を要求する。Tobiasはアフリカ駐在の米国大使に担当国での優先順位を決めるように指示した。これは途上国政府が決める優先順位と異なる恐れがある。

2) Tobiasから資金を受けているグループには、エイズ対策について何の経験もない宗教
グループがいる。勿論、彼らが作ったプロジェクトは立派かも知れないが、これまでの活動記録を重視するべきである。またTobiasは若者に対する教育の観点が抜けている。これはアフリカでは決定的な欠陥であす。ティーンエイジャーにエイズ予防のためのコンドームを使うことを教育することは、貧しいアフリカの少女を救うために重要である。

3) 治療薬の問題がある。途上国の2社の製薬会社が製造しWHOも承認している安価な
コピイ薬は、3種類の錠剤で朝と晩の2回飲めばよい。しかも年間の経費は140ドルである。
しかし、Tobias はこのコピイ薬を使う気はないようだ。一方Tobias が使用するとしているエイズ治療薬は錠剤でなく、医師や看護士が少ないアフリカでは、その使用は困難である。Tobiasが元の業界をひいきにしているのではないかと噂されている。