世界の底流  
イラクで外国投資奨励法の制定
2003年11月
 さる9月、アラブ首長国連邦のドバイでIMF・世銀の合同年次総会が開かれていた時期に合わせて、イラクにおいて、外国投資奨励法が制定された。
 これは、世界第2の石油埋蔵国のイラク経済を完全に外国資本の手にゆだねるという内容のものであった。これで、イラクは湾岸最大の投資天国となる。

 第1に、イラクのような戦争地域に投資することを尻込みする外国投資家に対して、イラクは高い収益を保障した。外国投資家に100%所有を保証している。これは、他のアラブ地域とはまったく異なっている。アラブ諸国は、通常、外国資本の100%進出を認めていない。
第2に、イラク国内で外国資本が得る利潤は、直ちに、制限なく本国に送還できる。
第3に、外国人は天然資源を除いて、イラク国内のあらゆるものを買うことが出来る。不動産に関しては、外国人の所有は認められていないが、一方で、40年間のリースが可能である。
第4に、イラク国内では、外国人のビジネスに対して、1年間の無税措置以後、3〜15%が課税される。
第5に、イラクの輸入関税はいかなる商品であろうと一律5%という異常に低い関税となる。食糧、医薬品、衣服、本などは「救援物資」であれば、すべて無関税となる。
第6に、外国銀行は自由に支店を開設できる。とくにこれから5年間、イラクの銀行を買収する権利は外国銀行の6行に限定されるが、その後はすべての外国銀行は自由にイラクの銀行を買収できる。ちなみにイラクにはラフィダイン銀行とラシィッド銀行という2大銀行しかない。
10月15日には、新しい通貨「新ディナール」が発行された。これらは、すべて、10月末にマドリッドで開かれたイラク再建援助国会議に向けて準備されたのであった。しかし、治安の悪化と、援助を申し出た国が日本の50億ドルだけであったという現実を変えることはできない。