世界の底流  
ラテンアメリカの中道左派政権のジレンマ
−11月20日、マイアミのFTAAサミットをめぐって−
2003年11月
 11月20日、米国のマイアミで、米州自由貿易地域(FTAA)の34カ国(キューバは除外されている)のサミットが開かれる。先回、2001年4月、カナダのケベックで開かれたFTAA首脳会議では、ベネズエラのシャベス大統領を除いて、すべての首脳が2005年のFTAA設立に賛成した。一方、ケベック市内では3万人が激しい抗議デモを展開した。
 しかし、今回、FTAAをめぐる状況はかなり変化しているようだ。
 2年前のケベック・サミット以来、ラテンアメリカの政治地図には中道左派政権が誕生しており、また人びとのFTAA反対の声は激しくなっている。

(1)ブラジルとエクアドルに中道左派政権が誕生した。
(2)アルゼンチンでは、ネオリベラルなルア政権が退陣し、さらに、過去に大量の民営化と規制緩和を行ったメネムの政権復帰が阻止され、キルチネル政権が誕生した。
(3)最近の世論調査では、ウルグアイとペルーで、資本と金融の自由化に反対する声が大きい。近くに行われる選挙で、中道左派が進出する予想がある。
(4)そして、ボリビアでは、天然ガスをペルー経由で米国に売却しようとしたサンチェス大統領が労働者と農民の抗議デモによって、政権の座を追われ、マイアミに亡命した。カルロス・メサ副大統領が大統領に昇格した。

 しかし、これらラテンアメリカの中道左派政権は、IMFと民衆の間に挟まれて、ジレンマに陥っている。選挙の公約である「貧困根絶」に手をつけられないからである。
 しかし、これまでのように、軍事クーデタによってその矛盾を解決するというシナリオも通じない。草の根の人びとの政治意識がかってないほど高まっているからである。ブラジルの「土地なき農民運動(MST)」のJoao Pedro Stedileは「ラテンアメリカは火山帯のような状況にある」と評した。
 
 これら政権は、マイアミ・サミットで前回のようにFTAAに賛成すれば、ボリビアのサンチェスのように、帰国しても、マイアミにUターンしなければならなくなるだろう。