イラク自衛隊派兵違憲訴訟  
『第3回意見陳述書』
 
2004年(ワ)第6919号 違憲行為等差止及び損害賠償請求事件
原告 北沢洋子
被告 国
意見陳述書

2004年11月29日
東京地方裁判所民事第18部 御中
原告 北沢洋子

原敏雄裁判長
工藤正裁判官
浜田更裁判官

準備書面(3)の「イラク戦争の実態」の項についての補足陳述をいたします。

 10月に入って、イラク情勢は一段と悪化の道をたどっています。米軍はファルージャなどスンニー三角地帯での戦闘に忙殺され、首都バグダッドの防衛もままならず、ひたすら防壁や塹壕の中に閉じこもっていて、武装抵抗勢力が自由に動き回っているという状態です。
 たとえば、10月1には、バグダッド市南部3ヵ所で車爆弾が爆破し、40人が死亡し、120人が負傷しました。続いて5日、同様のことが2ヵ所で起こりました。8日は、西側メディアや米企業が泊まっている旧シェラトンホテル、同じく、チグリス川西の「グリーンゾーン」も砲撃されました。「グリーンゾーン」は、政府官庁や大使館があるところです。15日も同じようなことが起こりました。
 米海兵隊をファルージャ攻撃にまわすと首都バグダッドの防衛が手薄になるということで、南部に展開している英軍に援軍を要請しました。このことは、米軍には戦闘部隊が不足しているということを物語っています。10月28日、850名のスコットランドの「ブラック・ウオッチ」大隊がイラク南部からバグダッドに赴きましたが、その翌日武装抵抗勢力の襲撃を受けて3名が戦死しました。
 11月に入って米軍のファルージャに対する総攻撃が始まると、さらにイラク情勢はエスカレートしました。
 11月8日には全土に戒厳令が敷かれました。しかし、1日、首都バグダッドでは、武装抵抗勢力によって同州副知事が暗殺され、2日には市内の石油省の建物が爆破されました。11日には、バグダッド市内で米海兵隊9人が戦死し、9人が負傷しました。ファルージャでの主要な戦闘が終了しても、その後もバグダッドでは、依然として武装抵抗勢力のゲリラ攻撃が続いています。
 米国政府は、イラクに展開している多国籍軍は米軍を除いて31カ国、24,000人にのぼると発表していますが、そのうち英国軍が8,500人と3分の1を占めています。また10〜160人という象徴的な派遣をしている国が13カ国もあります。
 この多国籍軍の中には、来年1月の総選挙を機に、撤退を決めている国が増えています。スペインなどすでに撤退した7カ国に加えて、オランダなど4カ国が撤退を決めています。
 結局、イラクに駐留を決めているのは、英国、イタリア、韓国、デンマーク、それに日本ぐらいです。
 日本が駐留するサマワでも、8月14日、武装抵抗勢力がオランダ軍に対する攻撃でオランダ兵1名が戦死し、5人が重傷を負うという事件が起こっています。これを契機にオランダ国内でイラクからの撤退を要求する声が高まり、ついに、来年3月、撤退が決まりました。
 日本の陸上自衛隊に対する迫撃砲の攻撃は、今年4月以来、8回に及んでいます。ついに10月22日、宿営地内に砲弾が着地し、また10月31日夜には10ミリロケット砲弾が着地しました。
 これまで、陸上自衛隊を守ってきたのは、サマワを県都とするムサンナ州の治安維持を担当してきた1,300人のオランダ軍でした。それが来年3月に撤退するとなると、自衛隊は武装抵抗勢力と正面から対峙しなければなりません。
 10月末、イラク戦争開始以来、イラク人犠牲者の数は10万人にのぼるという報告書が、米ボルチモアのジョンホプキンズ大学の調査チームによって発表されました。これ以上の死者を出さないためにも、また、日本が昔のようにイラク、そして中東の人びとの友になるために、自衛隊のイラクからの撤退を強く求めます。