著書の紹介  
あとがき
 

 私がグローバリゼーションと闘う人びについて書こうと最初に思ったのは、1999年6月だ。ドイツのケルンで行われたG7のサミット会場を、ジュビリーが35,000人の「人間の鎖」で包囲したときに経験した興奮を伝えたかったからである。
 同じ99年の11月、アメリカのシアトルで、ネオリベラルなグローバリゼーションに反対する一連の大デモの幕が切って落された。残念ながら、私はこれに参加できず、同時期にカリブ海のグレナダ島で開かれた「貿易とジェンダー」をテーマにした国連のセミナーに出席していた。それでも、99年5月にはじめて購入したパソコンのお陰で、インターネットを通じて、シアトルのデモの模様をあたかもその場に自分がいるかのように知ることができた。第5章で取り上げたなかで、私自身が参加したのは、2000年9月、プラハで行われたIMF・世銀年次総会に反対するデモだけである。それ以外はインターネットの情報である。

 本書の構成は大きく2つに分かれている。第3章までは、IMF・世銀、WTOというグローバリゼーションを推進している機関の実態について歴史的な経緯を含めて紹介した。第4章以降は、グローバリゼーションと闘う人びとの姿をNGOと社会運動の違いを含めて描くとともに、ますます広がりぐつある先進国と途上国の格差を解消するための理論と戦略について論じている。
 2003年に入り、最終校の段階になって、史上最大のイラク反戦デモが地球を席巻した。2月18日の『ニューヨーク・タイムズ』紙は、このデモを「ブッシュ政権とグローバルな世論という、超大国と超大勢力との対決」呼んだ。残念ながら、グローバリゼーションとブッシュ大統領のイラク攻撃、さらに、グローバリゼーションとテロリズムの関連について、本書で取り上げていない。原稿の段階では、9.11の真相やオサマ・ビンラディンとは誰かについての章が入っていたが、多くの人びとが手にいれられる価格にしたかったために、割愛せざるを得なかったのである。

 9.11事件、イスラム原理主義、そしてテロリズムについて言えば、私は第1にグローバリゼーションが生み出した醜悪な怪物であると考えている。事実オサマ・ビンラディンは、80年代のアフガニスタン戦争時にCIAの対ソ工作のなかから生まれた"英雄"であった。だが、イスラム原理主義者もテロリストも、24時間テロをしているわけでは決してない。彼らはグローバリゼ―ションが生み出した貧困層という"人民の海"のなかにいる。貧困こそテロの温床である。これらについては、私のホーム・ページを見ていただきたい。

 最後になったが、編集者の大江正章さんに深くお礼を申しあげたい。大江さんは、私の雑な原稿を、一字一句チェックしてくださり、読みやすい文章にしてくださった。また、私の若い友人である前田美穂さんにも感謝の言葉を送りたい。彼女は、インターネットと英語力を駆使して、すべての註を作成してくださった。