DebtNet通信 (vol.6 #8)  
「サオトーメプリンシペが完了点に」
2007年5月17日


 西アフリカの小さな島国サオトーメプリンシペは、数年にわたってIMF・世銀の厳しい構造調整プログラムを実施した結果、2007年3月にHIPCsイニシアティブによる「完了点」に達し、多国間債務帳消しイニシアティブ(MDRI)による債務帳消しを受けた。HIPCsのなかでは22番目の国となった。
 これは、IMF・世銀が強制したもので、マクロ経済の安定化、貧困戦略の遂行、財政均衡化、教育と医療の向上とマラリア対策などを指す。
 サオトーメプリンシペは「チョコレート島」と呼ばれる。これは、同国がココアの輸出に依存していることから来ている。
 サオトーメプリンシペには、1987年よりIMF・世銀の構造調整プログラムが導入された。とくに、ココア生産農民のための国営の買い上げ機関の民営化問題は大多数を占める小農民にとって打撃であった。さらに2000年以来、ココアの国際市場価格の下落により、打撃を蒙った。財政赤字とともに、貿易赤字が悪化した。GDPは、1980年に4,930万ドルであったが、2000年には4,350万ドルに減少している。一方、対外債務は1980年には2,350万ドルから、2000年には2億9,360万ドルに急増している。1980年の債務/輸出比は100.7%であったものが、1998年には2,000%になっている。以来、1999年から2002年にかけて、1,800%を記録している。
 その結果、国連開発計画(UNDP)による人間開発指数では、177カ国中、127カ国という低い状態にとどまった。
 2002年、サオトーメプリンシペはIMG・世銀の新しい条件、つまりガバナンス、構造改革、財政支出の削減政策の遂行を強いられた。金融、通信、エネルギー部門の民営化を強制された。税制に関しては、間接税の増税、国内外平等な投資基準、利潤の自由な本国送還制度、外国資本に対する免税措置などが強制された。
 これらは、サオトーメプリンシペ沖合いのギニア湾で石油の埋蔵が発見されてから、にわかに重要な課題となった。  
 石油は今後、サオトーメプリンシペの主要な収入になるだろう。石油開発は2012年にはじまることになっている。とくにギニア湾の石油の埋蔵はペルシャ湾に匹敵すると見られている。
 サオトーメプリンシペは、世界で最も重債務国に属する。1999年、債務総額は2億9,400万ドルであり、GDP比では624%に上った。
 2000年、同国はHIPCsイニシアティブによる「決定点」に達し、9,700万ドルの債務帳消しを受けた。これは、「債務の持続可能性」と呼ばれるものであった。一方、パリ・クラブは200年3月、債務のリスケを行なった。
 2002年7月、同国政府はIMFの「貧困削減成長基金(PRGF)」を受け入れ、2002年12月には世銀の貧困削減戦略ペーパー(PRSP)を受け入れた。これは、完了点に達するための条件である。
 しかし、その後同国の通貨と財政政策のガバナンスが不備であるとして、HIPCsのリストから外された。
 2005年になってようやく同国のPRGFが承認されて、2007年3月、完了点にたっしたことが認められた。世銀のIDAとIMFはともに3億1,400万ドルの債務帳消しを行なった。

 これで、どの債務が帳消しになるのか?

 1999年の同国の名目的債務総額は2億9,290万ドルであった。2005年には、3億2,460万ドルに増大した。その中で、多国間債務は62%、パリ・クラブの分は14%である。
 HIPCsの債務救済措置では、2005年の債務の中で6,170万ドルが帳消しになる。その結果、債務/輸出比は300%になり、IMF・世銀の持続可能な債務という規定をはるかに超える。
 多国間債務の70%が帳消しになった。これは、主として、IDAとアフリカ開銀の債務であった。IDAは元金の2,400万ドルの債務を帳消しにした。さらに2000〜20003年の利子を100%帳消し、2004年の利子については90%帳消しにした。アフリカ開銀は元金の4,300万ドルを帳消しにした。利子については80%を帳消しにした。
 2国間債務については、1,450万ドルを帳消しにした。
 サオトーメプリンシペは、GDP1人あたりが400ドルという世界で最も貧しい国の1つである。しかも、この国は、対外援助に依存しており、ODAは国のGDPの50%を占める。人口はわずか20万人であるが、その50%以上が、貧困以下の生活を強いられている。債務返済額はこのGDPの15.4%に上るのだが、これはHIPCsイニシアティブがはじまる前の1990年には、わずか5%に過ぎなかった。つまり、HIPCsイニシアティブが導入されてから、債務状況は悪化した。
 今回の債務帳消しによって、毎年、同国の債務返済額が150万ドル節約できるだけのことである。サオトーメプリンシペの将来は、2012年に始まる石油開発に依存している。