DebtNet通信 (vol.6 #7)  
「エクアドルの1976〜2006年の債務分析」
2007年4月7日


 南米のエクアドルは、2005年12月に左翼のラファエル・コレアが大統領に就任して以来、マスメディアの注目を集めている。就任とともに、コレア大統領は、(1)米国との自由貿易協定を締結しないこと、(2)109億7,000万ドルにのぼる重債務の返済を減らすことを、公約した。特に(2)に関しては、債権国、国際金融機関、国際金融資本などはエクアドルがどのような措置をとるのかと懸念している。
 とくに、ロンドンの『ファイナンシャル・タイムズ』などは、2007年2月16日付で、「エクアドルは、返済能力がありながら、不払いの脅迫をしている」という記事を書いた。欧米のマスメディアは、エクアドルに返済力があることを繰り返し書いている。
「エクアドルの債務/GDP比は、新興市場国の水準でも38%と低いほうである」という。「もしエクアドルが債務不払いの先例を作れば、これはゆゆしいことである」と警告した。
 マスメディアの分析に欠けているのは、政府の税収のなかに占める債務返済の比率である。エクアドルはこれが非常に高い。さらに、エクアドルの社会指数が低下している。これは債務取立て側の道義が問われるところである。農村部の貧困以下の人口は81%に達している。子どもの栄養失調率は50%である。
06年エクアドルの債務返済は税収の38%に達した。国連は、債務返済を税収の10〜13%にとどめるべきだという勧告を行なっている。
 エクアドルの多国間債務は、米州開発銀行、世銀など43億8,000万ドル、2国間債務は20億ドル、国債41億5,000万ドルを発行している。2国間債務ではスペインが第1位で3億9,860万ドルに上る。
 エクアドルは高い貧困率であるにもかかわらず、債務救済の対象国から外されてきた。エクアドルの大蔵省債務管理局によれば、1983年〜2003年の間、エクアドルは8回もパリ・クラブに呼ばれ、リスケを受けてきた。その中で、1回だけ、再融資を受けた。
 さらにエクアドルは、民間銀行の借り入れ分を、政府が国債を発行して肩代わりすることを強いられた。しかも国債の利子のほうがはるかに高い。
 エクアドル政府は、昨年末、対外債務の特別調査委員会(CEIDEX)を設けた。この委員会に、03年10月、PARCの30周年記念のシンポジウムに出席したメキシコ国立大学のOscar Ugarteche教授(ペルー人)が就任した。またブルッセルのEURODADも参加している。
 07年4月、Jubilee 2000 Red Guayaquilが組織した「不法な債務についての国際セミナー」で、Ricardo Patino経済財務大臣は「2007〜2010年の対外債務の返済率を現在の38%から11.8%に減らす計画」を発表した。この削減によって浮く資金は社会部門と基礎的なインフラ整備に充てられ、飛躍的に改善されるだろう、と語った。
 債権者たちは、エクアドルが債務不履行を宣言するのではないかと恐れている。一方、ここ数週間Patino大臣は、スペインとイタリア両政府に対して、スワップ協定について交渉を始めている。今のところ、債務返済は滞りなく行なわれているが、これかの数ヶ月の間に、政策が発表になる、との観測がある。
 エクアドル政府は正式に対外債務の監査を開始する。

 4月26日、ノルウエイ政府はエクアドルの「不法な債務」2,000万ドルを帳消しにした。これは06年10月6日、ノルウエイ政府が債務帳消し運動の圧力により、70年代、80年代の不明朗な船舶輸出保険8,000万ドルを「不法な債務」として、帳消しを決定した分のエクアドル分である。Patino大臣によれば、最初輸出保険は3,500万ドルであった。それが、返済総額となると1億ドルになった。この中でエクアドルはすでに8,000万ドルを返済しており、2、000万ドルが未返済であった。つまり、エクアドルは、元金以上のものをすでに返済していたのであった。
 これに先立って、エクアドル政府は、世銀の代表を国外追放している。エクアドルの石油収入を社会部門に充てることに世銀が反対し、これを債務返済に充てるべきだと勧告したことによる。