DebtNet通信 (vol.6 #4)  
「米州開発銀行が5カ国の債務を帳消し」
2007年4月7日


  2007年3月16日、ワシントンにある米州開発銀行はボリビア、ガイアナ、ハイチ、ホンデュラス、ニカラグアのラテンアメリカ重債務貧困国(HIPCs)5カ国の債務総額44億ドルを帳消しにすることを決定した。
  米州開銀はすでに2006年11月と2007年1月にこれら5カ国の債務を帳消しにすると発表していたが、今回、具体的な金額を含めた帳消しの詳細について発表となった。
  世銀が2006年にHIPCsの債務帳消しを決めたにもかかわらず、米州開銀は、帳消しを拒否していた。それに対して、ラテンアメリカ政府、ラテンアメリカ、米国、カナダ、EUなどの市民社会などの圧力により、今回の決定に至った。
  帳消しの内訳は、元金が34億ドル、利子分が10億ドルである。ボリビアは10億ドル、ガイアナは4億6,700万ドル、ホンデュラスは14億ドル、ニカラグアは9億8,400万ドル、ハイチは当面2,000万ドルだが、HIPCイニシアチブによる完了点に達した(2009年)時、5億2,500万ドルが帳消しになる。
米州開銀のLuis Alberto Moreno総裁は「歴史的な決定である。これらの国は貧困にあえぐ市民が必要としている教育、医療、そのたの社会的サービスに資金を回すことが出来る」と語った。
  しかし、ガイアナのBharrat Jagdo大統領によれば、「米州開銀がこれまで供与してきたソフト・ローンが減額する可能性がある」というのだ。
  米州開銀の帳消しのCut-Off Date(帳消しの期間の範囲)は2004年末である。これはIMFやアフリカ開銀の例に倣ったものである。米州開銀のスタッフは、最初、2003年末、あるいは2001年末としていた。これでは元金の帳消し額は、20億ドル、あるいは16億ドルになってしまう。
  米州開銀の帳消しの資金は、米州開銀の特別行動基金(FSO)から支出される。FSOとは、世銀のIDAと同じく、米州開銀のソフト・ローンの融資部門である。ここから、これら貧しい5カ国とドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、パラグアイにグラントあるいは、無利子のローンを供与する。FSOの利子は0.25%である。
 FSOの財源は、借り手からの返済分とドナー国からの定期的な拠出金である。つまり、FSO資金が債務帳消しに使われれば、FSOを維持するために、ドナーからの拠出金は絶対必要である。最大のドナーである米国は、すでに「債務帳消しの交渉と拠出金の交渉は別物である」と主張してきた。つまり、帳消し分を穴埋めするために拠出金を増やすという保証はない。つまり、ミレニアム開発ゴール達成のための資金のメドはつかなくなる。
  一方、米州開銀側は、2013年までに必要な拠出金についての交渉を始めるとドナーが言っているという。

  今回の債務帳消しによって、5カ国は、米州開銀への債務返済が30%ほど軽減される。
  しかし、これら5カ国が米州開銀から受け取るはずのソフト・ローンの減額によって、相殺されてしまう。NGOの「債務救済インターナショナル」の計算によれば、ボリビア、ガイアナ、ホンデュラス、ニカラグアに対するソフト・ローンは25%も減額になる。