DebtNet通信 (vol.6 #17)  
「リベリアが債務帳消しを受ける」
2007年12月6日


 内戦が続いたリベリアでは、2年前の選挙でEllen Johnson-Sirleaf 女史が大統領に就任した。今日、リベリアはやっとIMF、世銀、アフリカ開発銀行の15億ドルにのぼる多国間債務の帳消しの運びとなった。その内訳は、世銀分が4億5,800万ドル、IMF分が7億7,200万ドル、アフリカ開発銀行分が2億3,300万ドルとなっている。
 この債務は過去20年間にわたって累積したものである。この間、リベリアは内戦が続き、経済は破綻し、何万人もの人びとが家を失った。
民主的に選ばれたリベリア政府は、この負の遺産を引き継ぎ、半身不随の状態にあった。とくに国際金融機関に多額の債務を負っているということは、復興に必要な資金を得る手立てを閉ざされる。
 リベリアの06年度の政府予算は8,600万ドルであった。これでは、復興資金は言うに及ばず、債務返済もできないことは誰の目にもあきらかであった。
そこで、15億ドルの多国間債務の帳消しが必要になってくるのだが、すでに06年、世銀は世銀の内部資金から帳消し資金を調達すると公約した。しかし、IMFとアフリカ開発銀行は自己資金がないと主張した。
結局、援助国が8億4,200万ドルを拠出することになった。そのうちG8は7,100万ドルを拠出した。
 リベリアの債務帳消しが2年も遅れたのは犯罪的である。リベリアの失業率は85%に及んでおり、1人あたり1,000ドルの債務を抱えている。この債務は独裁政権時代に発生したものである。
にもかかわらず、ジョンソン大統領は、国際金融機関に対して、構造調整プログラムを忠実に実施し、マクロ経済をバランスさせ、債務を忠実に返済しているという証拠を示さねばならなかった。そこで、毎月リベリアはIMFと世銀に対して50ドルを債務返済の証拠金として払ってきた。
 リベリアのようなケースは今後、5〜10年にスーダンやソマリアで起こるだろう。

2.ロンドンクラブがコンゴの民間債務を帳消し

 07年11月15日、ロンドンクラブとコンゴ(ブラザビル)は、25億ドルの債務の80%の帳消しに合意した。
 ロンドンクラブは、2国間債務の交渉をするパリクラブに対して、途上国政府に貸している民間銀行のシンジケートである。交渉はロンドンで行なわれる。
 ロンドンクラブのコンゴの債務帳消し額は約20億ドルとなる。ロンドンで交渉に当たったコンゴのPacifique Issoibeka蔵相は、「帳消しによって浮いた資金は水、保健、電気、インフラ、教育部門に当てられる」と語った。
 コンゴの2国間、多国間の公的債務の帳消しはすでに終わっている。これで、コンゴは2004年に55億ドルに達していた債務から解放された。

3.ウガンダ政府の腐敗

 ウガンダの会計検査院は、ウガンダ議会に対して、2005/6会計年決算についての監査報告を発表した。
 それによると22億ドルに上るウガンダの年間予算の大きな部分が、腐敗、財政運営の欠陥、無制限の支出などによって消えていると記載している。
 会計検査院の報告は、続いて、さらに政治家や官僚個人の監査を行なえば、さらに大きな不正が暴露されるであろうと述べた。
 さらに、報告書は、日本政府のウガンダに対するノン・プロジェクト贈与スキームによる債務帳消し分7億1,00万ドル分と、ウガンダApex民間企業融資スキームによる1億2,700万ドル分の監査を行なえば、さらに不正の額は増えるであろうと言っている。
 この2つのローンに関しては、不良債務であるので、当然帳消しにすべきてある、としるしてある。

4.世銀がアフガニスタンに民営化条件付きのソフトローン融資

 世銀の低所得国向けの融資機関である国際開発公社(IDA)は、2005年11月に8,000万ドルの長期無利子(ソフトローン)融資を決定した。しかし、この融資はNGOの調査によって、アフガニスタンの50の国営企業と公共サービス機関を2年間で民営化するという条件が付いていた。
 この度、アフガニスタン政府のHaneef Atmar教育大臣がノルウエイを訪問したときに明らかになった。
 教育相によると、アフガニスタン政府が教育部門の民営化を考慮しているというが、ではなぜ、世銀は融資と民営化を一体化しているのか、という疑問が出てくる。
 アフガニスタン政府は世銀融資を受けた後、2005年末から2006年はじめにかけて、開発計画を設立した。これは世銀が融資に条件をつけている証拠である。

5.世銀は腐敗を理由に対フィリピン融資を否決

 11月19日付けの『ウォールストリート・ジャーナル』紙によると、世銀の理事会はフィリピンの道路建設プロジェクトに対する2億3200万ドルの融資を否決した。
その理由は、世銀のスタッフが十分にこのプロジェクトの腐敗問題を調査していなかったことと、ゼーリック総裁に事前にブリーフィングをしていなかったということであった。
 世銀の調査官は、中国の国営企業である「中国国営建設エンジニアリング社」が複数の建設会社とカルテルを結成して、設計段階でプロジェクトに関与していると疑っている。
 世銀のスタッフは計画の段階で理事会を納得させることが出来なかった。そしてゼーリック総裁が南アジアを訪問中にローンを許可する手続きを済ませてしまった。したがって、理事会がこの融資案を否決したことは、世銀のスタッフと理事会との対立を示すものである。
 世銀は腐敗問題で割れている。ウォルフォビッツ前総裁の時代から腐敗問題で融資を遅らせ、スタッフと対立していた。スタッフは、受注会社の罪を貧しい国に負わせていると不満を述べていた。これが、ウォルフォビッツの辞任に繋がっていった。