DebtNet通信 (vol.6 #15)  
「エクアドル政府が債務を監査」
2007年10月11日


 「債務の監査(Debt Audit)」は、ブラジルのジュビリーが2000年9月、債務についての民間による国民投票を行って以来、ジュビリーサウスの主なテーマであった。今年9月にブラジルジュビリーは「債務の監査」についての民間による国民投票を再び行うことになっている。
 一方、コレア左翼政権が誕生したエクアドルでは、経済金融省が主体となって、7月23日、政府自身が「債務監査委員会」を設置することになった。これは世界ではじめての試みである。
 エクアドルは人口○○万人、南米の小さな国でだが、石油を埋蔵している。一方では、エクアドルは総額106億ドルにのぼる対外債務を抱えている。この債務を返済に国家予算の38%が充てられている。
 9月はじめ、コレア大統領は、ニューヨークで開かれた米州評議会で「エクアドル政府は、社会部門に予算を投じるために、今年12月まで、対外債務の返済を止める。また、不法な債務に関しては、支払わない、と述べた。そのために、エクアドルでは債務監査委員会を設置した、とも語った。
 コレア大統領は、さらに、利子が安いものに債務を借り換える、と語った。これは利子が高い債務を買い戻して、国債を発行する。これは2030年を満期とした年率10%になるが、地域の金融機関かあるいは、ベネズエラに引き受けてもらう、としている。
 エクアドル政府は、今後、債務の返済を段階的に減らす計画である。2008年には30%減となる。これは、8月14日付けの『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙に掲載された記事によると、2007年に27億4,000万ドルを返済したが、2008年には、19億4,000万ドルに減らす。

債務監査委員会の設置

 7月23日に発足したエクアドルの「公的債務監査統合委員会(CAIC)」は、経済金融省の代表、検事、会計監査長、公務員腐敗委員会代表などと民間の国際的な専門家によって構成された。国際的な専門家には、アルゼンチンのAlejandro Olmos弁護士、ペルーの経済学者のOscar Ugarteche博士、EURODADのGail Hurley、ドイツジュビリーのJurgen Kaiser、ブラジルのMaria Lucia Fatorelli、ベルギーのジュビリーCADTMのEric Toussaintなどである。
 この委員会は、今後1年かけて2国間公的債務、パリクラブの協定、国債、多国間債務など個々の債務の品目を、法的、経済的、社会的、環境的な影響について詳しく分析していく。
 この委員会の設置の影の推進者は、元経済金融相のRicardo Patinoであった。彼は、委員会の名前に「統合(Integral)」という言葉があることを強調した。

「これは債務の監査だけにとどまるものではない。これは、不法な債務を累積してきた法的、政治的、経済的な要因をあぶり出すことを目的としている。また、不法な債務が住民に対して与えた社会的、環境的な影響を明らかにしなければならない。」

 彼は、「不法な債務は、返済されない」と宣言した。
 委員会は、2国間債務、多国間債務、国債と民間債務、国内債務の4小委員会に分かれて作業を進めていく。

エクアドルは環境を開発に優先

 9月24日、国連のグローバル気候変動についてのサミット会議に、エクアドルのコレア大統領が出席し、「ヤスニITTイニシアティブ」を発表した。
 このエクアドルのイニシアティブは、石油輸出国がグローバルな温室効果ガスの放出削減に貢献するために、国内最大の石油の埋蔵を開発しないという決定をしたことでは、世界で初めての試みである。同時にこのイニシアティブは、エクアドルが世界で初めて真に持続可能な経済を確立しようとしていることを示した。
 このイニシアティブの中心課題はヤスニ国立公園での石油開発を中止することである。国立公園内には、自ら近代文明から隔絶している2つの先住民族が暮らしている。同時に、地球上で最も多様な種が生息している土地である。
 エクアドルは、ヤスニ国立公園のすばらしい種の多様性、エコシステム、先住民族の文化的一体性を守るために、約10億バレルの埋蔵を有するITT石油油田地域の開発を放棄すると言っているのだ。
 エクアドルは、これまで工業化以前に比べると0.5%しかCO2を放出していない。そして、今エクアドルは、約4億3,600万トンのCO2を永久に地下に押さえ込もうとしている。これは、先進国が野放図にCO2を撒き散らしていて平気な顔をしているのに比べると、崇高な精神である。
 エクアドルは石油の輸出に依存している。石油の輸出は全輸出額の3分の1にのぼる。エクアドルは今、オルターナティブなエネルギーの開発、効率のよい運輸手段の開発、貧困根絶、すべての人に医療衛生と教育のアクセス、雇用増大などに取り組んでいる。国際社会はこのエクアドルの試みを支援すべきである。