DebtNet通信 (vol.6 #12)  
「不法な債務帳消しキャンペーン・その1」
2007年7月5日

1.フランスのNGOがアフリカの大統領の不正蓄財の調査を要求

 国際的に不法な債務(Illegitimate Debt)を帳消しせよというキャンペーンが展開されている中で、フランスのNGOが元フランス領の軍事独裁者による不正な蓄財を暴露する活動が始まった。それらのNGOは、「Sirvie」、「Serpa」、「Congolese Diaspora Federation」などに加えて、カトリック系の開発援助NGO「CCFD」である。
 フランスには、不正に取得した資金を使ってフランス領内で資産を蓄財することを禁止する法律(Recel de Dournement de Fonds Public)がある。NGOはこの法律を使って、フランス国内に蓄財したコンゴ(ブラザビル)のSassou Nguesso大統領やガボンのOmar Bongo大統領などアフリカの独裁者の不正蓄財を法廷に提訴した。
 このフランスの法律は、公金を盗んで、それをフランス国内に蓄財することを罪としたもので、これは、一般には、パリやニースにある大邸宅や豪華マンションの形をとっている。
 Sassou やBongo自身は大統領特権で守られているが、家族たちには特権はない。しばしば、不正財産が家族の名義になっているので、捜査が可能である。
 フランスのNGOたちはこのような捜査のメスが入ることにより、外国の首脳たちが、フランスでは不正蓄財が出来なくなり、またこの動きが他のEU諸国や米国にも広がっていくようになることを期待している。

 前号で、スイス政府がハイチの元独裁者Duvalierの資産凍結を解除しようとしていることを報告したが、ハイチのNGOと世界中の抗議運動の結果、スイス政府が凍結解除を向こう3ヵ月延期したという嬉しいニュースが入ってきた。

2.フランスのCCFDは、不法な債務についての報告書をまとめた。以下は抄訳である。

 「飢えに反対し、開発のためのカトリック委員会(CCFD)」の報告書は、過去数十年間に独裁者によって盗まれた総額は1,000〜1,800億ドルに上ると、述べている。
 なかでも、民主コンゴ(旧ザイール)では、モブツ大統領による不法な債務は50〜60億ドルに上る。これは民主コンゴのGDPにほぼ等しい額である。いかに腐敗の度合いがすさまじいことがわかるだろう。しかもこれには、独裁者の家族の分は入っていない。
 IMFのMichel Camdessus元専務は、「1兆ドルを超えるだろう」と述べた。
 政治的にこのような腐敗は、民主化を阻害する。これは、資金的に独裁者を支えるものであり、反対派をカネで買収し、反対派弾圧の武器を購入することを可能にする。
 独裁者の不正蓄財については、旧宗主国やスイスなどの法的天国は、一応返還を約束してはいるが、実際にはほとんど実行されていない。これまでに、正統な持ち主である現政府に返還されたのは40億ドルであり、凍結されたのは27億ドルでしかない。しかも、これを実施したのは、スイス1カ国である。スイス政府はフィリピンのマルコスとナイジェリアのアバチャの不正蓄財分の一部を返還した。また米国もサダム・フセインの不正蓄財を現イラク政府に返還した。
 フランスは、2003年、国連のメリダ腐敗条約(とくに第5条は、国際法の基本原則として、不正蓄財の返還を謳っている)に署名した最初の国であるにもかかわらず、不正蓄財を返還していない。

3.ペルー政府は、パリ・クラブに25億ドルの債務を返済した。

 パリ・クラブは、これまで1993年、1996年と2回にわたってペルーの債務を繰り延べ(リスケ)してきた。しかし今年5月23日、突然、「ペルー政府がこれまでの債務を前倒しして、25億ドルの返済を承諾した」と発表した。
 この債務返済は今年の10月1日に行われる。それ以前にペルー政府は、すべての債権国と個別に協定を結ばねばならない。
 この問題について、ペルーのNGOのComision Episcopal de Accion Social (CEAS)の、Humberto Ortiz経済学者は、以下のように分析している。

(1) ペルー政府は、投資環境を改善するために、信用度を高めるために債務を返済した。
(2) しかし、この対外債務を返済するために、国内通貨で国債を発行した。これは年率6.5%、8%と利子が高い。つまり政府は安い利子の債務から高い利子の債務に取り替えたことになる。債務は急速に増大することになる。
(3) この交換には透明性は全くない。この交換を担当した人びとは、第2の債務市場を操っている人びとである。
(4) 対外債務の返済で、浮いた資金の使途が明確でない。