DebtNet通信 (vol.6 #1)  
「IMFは嫌われ者」
2007年1月12日

 昨年12月28日、フィリピン政府は、IMFに対する債務を、前倒し返済すると発表した。
 フィリピンのIMFへの債務総額は、2億1,990万ドル(1億4,630万SDR)である。
 フィリピンの声明は、その前月のウルグアイ政府の発表に続くものであった。ウルグアイ政府は、5〜10年間の間に10億8,000万ドルにのぼるIMFへの債務を返済すると声明した。
 ウルグアイ、フィリピンの声明は、アルゼンチン、ブラジル、インドネシアに続くものであった。この傾向は、アジアやラテンアメリカの中所得国にとどまらず、貧しいアフリカにも及んでいる。
 たとえば、ガーナは、IMFの「貧困削減成長基金(PRGF)」から脱退することを宣言した。PRGFは貧困国に対する無利子の融資基金だが、厳しい条件がついている。
 また、ザンビア大統領は予算についての新年のメッセージで、IMFが要求した主食をはじめとした農産物、上下水道、国内交通、蚊帳、書籍、新聞などに対する17.5%の付加価値税の再導入を拒否すると発表した。これはIMFがPRGF融資に伴って要求した条件であった。この問題は、国内で激しい反対にあっていた。
 IMF離れの傾向は、これに留まらなかった。最近大統領選に勝利したニカラグア、エクアドルもIMFとの決別を宣言している。ニカラグアのオルテガ大統領は貧困根絶が最優先課題であるといい、エクアドルのコレア大統領(イリノイ大学で経済学の博士号を取得)は、国債の75%の債務帳消しを求め、これを社会サービスに振り向けると宣言した。
 これは、2001年12月、アルゼンチンが債務不履行となり、IMFに対しても、国債の保有者に対しても、債務の破棄を求めた。これによって、アルゼンチン経済の縮小期間はたった3ヵ月で済み、その後は年率8%という高い成長率を記録した。そして、全人口3,600万人中800万に達していた貧困層を救済したのであった。
 このアルゼンチンの例を知っているコレア大統領は、債権の放棄を求めても、経済は破産することがないと、認識しているのだ。

 IMFは財政困難に陥っている。まずブラジルとアルゼンチンという最大の借り手2カ国が、前倒しをして返済をしたので、2005年4月〜2006年3月の会計年度では、利子収入が40%減を記録した。
 IMFは経済を安定化させると称して、融資に厳しい条件を課してきた。たとえば、財政均衡、貿易収支の均衡、インフレ抑止と称して、財政支出の削減、民営化、金融部門の自由化などを強制した。その結果、貧困層に計り知れない打撃を与えた。
 IMF と手を切る場合、最貧国には、中所得国のように簡単にはいかない。たとえば、ブラジルは、IMF債務を返済するとき、国債を発行して返済資金に充てた。しかし、ガーナやニカラグアのような最貧国にとってはこれは容易なことではない。