カリブ海の貧困国ハイチがIMF・世銀による重債務貧困国(HIPC)イニシアティブの決定点に達した。これによって、ハイチは1億4,030万ドルの債務削帳消しをうけることになる。
さらに多国間債務救済イニシアティブ(MDRI)による完了点に達すると、さらに2億4,300万ドルの債務帳消しを受けることになる。しかし、これは08年9月と予想されている。しかし、完了点にいたる条件が厳しいので、しばしば、1年ぐらいは遅れる。
その場合、1,860万ドルが追加される。
このたび、米州開発銀行(IDB)が07年1月にMDRIに参加することになったので、ハイチの債務帳消しはさらに3億3,300万ドル上乗せされる。
ハイチの債務は多額であり、貧しいハイチ経済にとって重荷である。しかもハイチの債務の多くは、不当な債務である。05年9月の時点で、ハイチのノミナルな債務総額は13億ドルであった。この中で、多国間宰務の比率は82.2%に上る(IDAは37.9%、IDBは40%)。パリクラブの2国間債務は14.4%(イタリア5.2%、フランス4.8%、スペイン2.9%などが最大の債権国)に上る。
2002年3月、世銀の独立評価パネルは、1986年―2001年間のIDA融資がハイチの開発に果たした役割はほとんどなかった、と評価した。
にもかかわらず、ハイチはIDA債務の返済を義務づけられており、05年にはIDAに乏しい外貨から4,000万ドルもの返済を行なった。
ハイチは緊急に債務帳消しを必要としていることは疑いない。したがって、ハイチが決定点に達したことは喜ぶべきことである。
ハイチはカリブ海諸国で最も貧しい国である。1人当りの収入は450ドルだが、1日2ドルの収入の人は人口の78%を占め、さらに1日当り1ドル以下の貧困層は54%に達する。成人の53%が識字者であり、6〜12歳の子どもの就学率は55%でしかない。教育と医療はほとんど公立ではない。にもかかわらず、世銀がハイチをHIPCに規定したのは極最近のことであった。したがって、現在なお、ハイチはあらゆる債務帳消しの恩恵から外されている。
ハイチ政府は債務帳消しで浮く資金を教育、保健、上下水道、環境保全、自然災害対策措置などに向ける、と公約した。とくに、教師の育成、教科書、学校給食、医薬品の供与、予防注射、産科クリニック、農村部での安全な飲み水の供給などに優先的に使うと膏薬している。
これらは非常に野心的な公約である。しかし、06〜07年のHIPCイニシアティブによる債務帳消し後、ハイチ政府は、依然として債務返済に予算の14.6%を支払わねばならない。
なぜなのか?
それは、IMF・世銀の「持続可能な債務」の規定が間違っているためである。彼らは、債務総額は輸出の150%までとしている。また、IMF]・世銀は、06〜25年間のハイチの成長率を4.2%と計算しているが、実際、過去10年間のハイチの成長率は1%以下であった。
ではなぜIMF・世銀はこのような楽観的な予想をたてたのだろうか?ハイチは過去半世紀にわたって、政治的に不安定にあった。この不安定を取り除くと、4.5%という数字が可能だというわけである。
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