DebtNet通信 (vol.5 #4)  
「IMFがモザンビークへのODA を制限」
2006年2月1日

1.IMFはモザンビークへのODAを制限

 モザンビークは、アフリカの中でも最も貧しく、2国間債務、IMF・世銀などの多国間債務すべての帳消しを受けた国の1つである。
 ヨーロッパ政府の中には、2015年までにミレニアム開発ゴール(MDG)の達成のために援助の増大を要求するNGOのキャンペーンや政治的圧力により、モザンビークに援助を増やそうとする国が多い。これはモザンビーク政府の医療や教育予算に充当させようとする財政援助(Budget Support)である。
 しかし、IMFはモザンビークに対して、この財政援助を受けないように圧力をかけている。IMFはヨーロッパからの援助は国家予算の枠外のプロジェクト援助にするべきだと言っている。
 この問題が顕在化したのは、昨年11月、モザンビーク政府のPRSP版である「Plano de Accaopara a Reducao da Pobreza Absoluta(PARPA)2006〜9年を発表したときであった。そこには、援助額は2006年の8億8,900ドルから、2008年に10億4,400万ドルに増やすが、その後は据え置きになっていることを発見して驚いた。
 つまりモザンビークの啓発計画省は、ドナーたちが供与しようと申し出ている援助額ではなく、IMFが指定した援助額に従っている。
 なぜこんなことになっているのかと言うと、これはすでに20年以上にさかのぼるのであるが、IMFは「援助供与がインフレを起こす」というODA性悪説によっている。IMFにとって、インフレとは最悪の罪であり。したがって援助は制限すべきである、ということになる。
 しかし、IMFが昨年8月、モザンビークを含めたアフリカ5カ国を対象にして調査したところでは、かなりの援助増はコントロール可能であり、悪影響を及ぼさない、という結論であった。www.imf.org/external/np/pp/eng/2005/080805a.pdf

 モザンビークに対する巨額の援助増加はインフレを起こすかも知れないが、しかし、これはある一定の率にとどめることができる。なぜなら財政規模の拡大は急速なGDP成長をうながすことが出来る。
 IMFの最近の研究では、高いインフレの期間でも実質成長を獲得できし、為替レートを引き下げにつながらない、という結果が出ている。むしろ、援助額を変動させることこそが問題である。低開発国のケースでは、開発計画が明確になっていれば、“かなり”の援助増をうまく利用できる、としている。
 しかし、IMFのモザンビーク・チームは自身の研究を全く考慮していないようだ。
 2005年10月17日モザンビークのIMFに対するLetter of Intent www.imf.org/external/np/loi/2005/moz/101705.pdf ではIMFが「国内優先赤字」の解消をうたっている。2005年の2億2,500万ドルの赤字を2006年には1億9,000万ドルに減らす。これは実際には、ヨーロッパからの財政援助額が05年の2億、400万ドルから06年には3億800万ドルに増えることを予想している。

 IMFが、モザンビークにこのような援助額の制限をつけるのには、以下に述べる2つの矛盾した行為がある。

1) IMFはモザンビーク政府に援助に課税することを要求している。援助に課税した額は政府の収入として支出できる。しかし、ヨーロッパ政府に法律では援助は課税できない。したがって、モザンビークは援助を受け取れない。

2) しかし、モザンビークはプロジェクト援助を受け取ることが出来る。なぜならこれは政府予算外になっている。しかし、現在ヨーロッパ政府はプロジェクト援助を減らし、財政援助を増やそうとしている。

 IMFはまさにこれを反対の方向をめざしている。

2.ドイツ新首相が0.75の援助を確約

 ダボスの世界経済フォーラムに出席したドイツのメルケル新首相は、開会式のスピーチで、ドイツは2010年までにGDPの0.51%、2015年までに0.7%の援助を増やしていくことを誓約した。
 さらに、ドイツのThomas Mirow副蔵相は、「予算外の追加の資金が得られなければ、この目標を達成するのは困難である」と語った。これには、現在議論されている航空券課税も1つの選択肢であると、語った。
 また副蔵相は、その目標の達成のために、債務救済を増やすことである、と述べた。しかし、債務帳消しをもって援助増にあてることが出来ないとして02年3月の国連モンテレイ合意に反する。
 
3.EUは援助トラスト基金を世銀をバイパスして供与


 EUはアフリカに対するEUの援助を供与するためのトラスト基金を創設する計画を持っている。しかし、これは世銀を通じて行わない。
 なぜなら、ヨーロッパの援助はヨーロッパの政策に従って行われる。EUの援助は先進国の援助の56%を占めて折り、最大のドナーである。EUの開発委員長はLouis Michelであって、「これは世銀の政策に反対しているわけではない」といっているが、世銀の総裁に米国のネオ・コンの1人であるポール・ウォルフォビッツが就任したことに関係していることは確かである。EUは開発委員会と、ソフト・ローンを拠出するヨーロッパ投資銀行(Orlando Arango総裁)と共同の政策でもってトラスト基金のアフリカ援助政策を決定する。これは道路、鉄道、電信電話、水道、エネルギー・ネットワークなどインフラ。プロジェクトに拠出される。基金は6月末に発足する。