DebtNet通信 (vol.5 #37)  
「米州開発銀行がラテンアメリカのHIPCsの債務を帳消し」
2006年12月8日

 11月17日、米州開発銀行は、ボリビア、ガイアナ、ホンデュラス、ニカラグア、ハイチなどのラテンアメリカ5カ国の債務の帳消しを決定した。帳消し総額は16億ドルから35億ドルにのぼると見られる。
これら5カ国は、IMF・世銀が規定した重債務貧困国(HIPCs)の範疇に入っている。
 2005年、英国のグレンーグルスで開かれたG8サミットにおいて、HIPCsの多国間債務の帳消しが決議された。
 これを受けて、05年から06年にかけて、IMF、世銀はHIPCs20カ国の多国間債務を帳消しし、さらにもう20カ国(アフリカ17カ国、ラテンアメリカ1カ国、アジア1カ国、中央アジア1カ国)もHIPCイニシアティブの完了点に達するとき、随時に帳消しが行なわれることになった。
 アフリカに関しては、IMF、世銀と同じく、アフリカ開発銀行も債務を帳消しした。しかし、ラテンアメリカについては、米州開発銀行が債務帳消しを拒否した。そのため、米国のジュビリーをはじめとして、国際的な債務帳消しキャンペーンが、米州開銀に対して、ロビイを続けてきた。今回の決定は、その成果である。

さらに5カ国が年内、または来年中に債務帳消しに

 2006年中にシエラレオネとサントーメ・プリンシペの2カ国がHIPCイニシアティブの完了点に達するとして、帳消しを受けることになっている。シエラレオネは2002年に、サントーメ・プリンシペは2000年にすでにIMF・世銀の厳しい条件をクリアしていた。にもかかわらず、シエラレオネなどは年間2,500万ドルもの額の債務返済を強いられたのであった。シエラレオネは長い内戦を経て、アフリカの中でも最も貧しい国である。1人当たりの1日の収入は0.58ドルである。そして、帳消しになったとしても、残りの債務について。年に900万ドルもの返済を今後も続けなければならない。
 リベリアも2007年中に債務帳消しを受けると予想される。しかし、それには、まず、債務の元金15億ドルを返済しなければならない。しかも、リベリアがHIPCイニシアティブの完了点に達するまで、毎年、債務返済を続けなければならない。リベリアが、最近、残酷な内戦から脱出したばかりであるのにもかかわらず、債務返済を強いるのは、苛酷である。英国は、リベリアの債務の元金を先進国が肩代わりするべきだといっている。

ウルグアイがIMFに債務を前倒し返済

 2006年11月、ブラジルやアルゼンチンと同様、ウルグアイがIMFに債務の前倒し返済を行なった。その額は、10億800万ドルにのぼる。ウルグアイは、これを5〜10年にわたって返済していく。この債務は2005年にIMFから借りたものである。
 これによって、ウルグアイはIMFの条件と支配から自由になれる。
 IMFの条件とは、政府の公共サービスの支出の削減、国有企業やサービスの民営化、金融の自由化などが含まれる。これらは、まず、政府や議会が経済をコントロールできなくなる。すべて貧困層が犠牲になる。
 IMFの債務を前倒し返済しているのは、中所得国である。IMFの条件や支配から最も解放されるべき国は貧困国である。しかし、彼らには返済すべき資金がない。
 「IMFは条件をつけることを止めろ」という国際キャンペーンが必要である。