DebtNet通信 (vol.5 #35)  
「マラウイが完了点に達した」
2006年10月2日

 06年9月1日、マラウイがIMF・世銀の拡大HIPCイニシアティブの「完了点」に達した。これで重債務貧困国に指定された国は20カ国になった。その結果、マラウイは、多国間債務救済イニシアティブ(MDRI)の下で、IMF、世銀、IDA、アフリカ開発基金((AfDF)から債務帳消しを受けた。マラウイは元金と利子合わせた名目債務31億ドルの帳消しを受けることになる。これは90%の債務帳消しである。
 これまで、マラウイは、01〜05年は年間3,900万ドル、06〜25年の間、1億1,000万ドルの債務返済をすることになっていた。以後、06年〜25年間のマラウイの債務返済額は、年間500万ドルとなる。
 今回の債務帳消しに当たって、マラウイは追加の帳消し措置(Topping-up)を受けた。つまり、通常の債務帳消しだと、マラウイの債務は「持続可能な債務」にならない。その理由は、マラウイの輸出品の価格値下がりと国際利子の上昇にある。
 2000年にマラウイは「決定点」に達していた。したがって、マラウイはIMF・世銀の構造調整プログラムを忠実に実施していると判定されて以後、長い苦しい年月を過ごさなかったのである。通常決定点と完了点との間は3年で、債務返済を忠実に実行しなければならない。しかし、6年と長くなったのは、前政権の02年、03年、04年と続けてIMFのPRGFの中で「財政支出の過大」だと判定されたからである。これに対して、前政権は、「これは避けられないことで、しかもドナーたちの政策アドバイスに従った結果であった」と弁解した。
 マラウイに対するHIPCイニシアティブの重要な条件は、国営農産物取引所ADMARCの民営化であった。これは農民と消費者に農産物の補助金を出し、一方、国内価格の引き下げを行ってきた。したがって、これを民営化することは、農民と消費者に破壊的な影響をもたらすことになる。マラウイの市民社会は、ADMARCの民営化反対キャンペーンをしてきた。マラウイ経済正義ネットワークは「ADMRCは小農民に肥料の補助金をだすなど、重要な社会的機能を果たしてきた」という。
 世銀も「貧困社会インパクト分析(PSIA)」を実施し、同様な結論を引き出していた。しかし、その報告書を長い間隠していたため、発表されたときには、すでに遅すぎた。そして、IMFは前政権にADMRCの民営化を強制し、農産物の補助金を廃止し、財政赤字を埋めるために備蓄穀物を売却させた。
 穀物備蓄の市中への放出、肥料価格の高騰は、マラウイに食糧危機をもたらした。その結果、政府は、国内産よりもはるかに高いとうもろこしを輸入せざるを得なくなった。それは、新たな財政支出をもたらした。
 これは、IMFにとっては、面目丸つぶれの事態だった。そこで、ADMARCを一時国の下に返した。しかし、新しい政府は、ADMARCの事業を“民活化”すると言っている。
 「完了点」に達した際、マラウイはIMFの25の条件のうち、教師の養成と保健という2つの条件を満たすことができなかった。第1の教師の養成は、毎年6,000人という目標を、その半分、3,000人しか養成能力がない。また、保健予算を予算の13%にするという目標も、食糧危機にために予算が割かれて不可能である。
 いずれにしても、債務帳消しはマラウイにとって、MDG達成のための基礎となる。これは喜ばしいことである。今後の課題は、再び、債務危機が発生しないようにすることであり、同時にどのように国内債務を処理するかにある。
 マラウイの1人当たりのGNIは160ドルであり、これは1990年レベルから大きく低下している。人口の15%がHIV/AIDSに感染しており、輸出の90%は農産物である。