DebtNet通信 (vol.5 #20)  
「IMFが新興国の投票権を拡大か?」
2006年4月14日

 IMFのロドリゴ・ロト専務理事は、4月22日からはじまるIMF・世銀の春季総会を前にして、アジアなどの新興国の投票権を拡大するという提案書をIMF理事会に配った、と伝えられる。
 複数の理事たちの言によれば、急成長する経済力に比較して、新興国の投票権はかなり少ないので、それを引き上げようというものだと、言っている。しかし、ロト専務理事の提案では、具体的な国名は挙げられていない。しかし、それは韓国、トルコ、メキシコなどが該当する、と見られる。
 ロト提案では、プロセスは2つの段階に分けられる。第1段階は、今秋シンガポールで
開かれる年次総会で決定されるのだが、いくらかの国の投票枠を一次的に増大する。第2段階では、あまり明らかではないのだが、アフリカの投票権が調整される。と同時に、政治的に非常に微妙な問題、すなわち、現在24人の理事の椅子を再配分する。現在はヨーロッパ人に偏っている。
 理事のなかには、より包括的なプランをシンガポールに出すべきだと言う意見がある。
 ラト専務理事はロイター通信のインタービュに「IMFは今日の世界の国ぐにの新しい状況と役割に適応しなければならない。それは過去にもやってきたことだし、今我々がやらねばならないことだ。なぜなら、新しい国ぐにが重要な役割を果たしているので、これを調整しなければならない」と語った。
 IMFの力関係は投票枠によって示される。投票枠は国の経済力に沿っている。しかし、その枠は5年ごとに見直しされることになっている。次の5年目は2008年になる。投票権の変更は、加盟国の85%の賛同が必要である。
 ラト専務理事の提案は、何十年も続いた欧米の支配を変えよというアジアの新興国の要請にもとづくものである。そしてロト専務理事はこれを中期戦略のレビューとして出した。それは最近、IMFの存在感が低下しているという批判をふまえてのことであった。このレビューは春季総会で議論される。
 ラト専務理事の提案は単にうわべだけの改革であるという批判がある。投票権の決定には、IMFのオーバーホールが必要だ。現在、ベルギーのような小さい国が、インドやブラジルのような大きな経済より大きな投票権をもっている。また、改革提案には中国が含まれていない。これは中国の元レートの切り上げを前提とする、という米国の拒否権を考慮したものだ。
 したがって、IMFの力関係を変えることは、半世紀以上もIMFに影響力を行使し、専務理事のポストをヨーロッパが独占してきた欧米にとって、まだ解決不可能なテーマである。
 4月6日、「Eurogroup のJean-Claude Juncker議長は、「IMFの中で、ユーロ圏の役割を強化していく」というヨーロッパ中央銀行の理事会の呼びかけを支持した。
 Junker 議長は、「ヨーロッパ中央銀行は国際通貨政策における中心的な、かつグローバルなプレイヤーだとして尊敬されている。この地位は実体化されねばならない」と言った。
 1992年の改正で、英国に代わって、日本がIMFの投票枠では第2位になったといういきさつがある。ヨーロッパ中央銀行のLorenzo Bini Smaghi理事は「IMFの改革には、ユーロ圏により多くの権限が与えられるべきだ」と語った。
 IMFではヨーロッパ諸国はEUとして1代表となるべきで、それで浮いた枠を途上国に回すべきだという意見がある。この点については、EU内では意見は分かれている。