DebtNet通信 (vol.5 #2)  
「世銀がチャドの石油開発融資を中止」
2006年1月15日


 1月早々、世銀はアフリカのチャドの石油開発プロジェクトに対する1億2,400万ドルの融資を一時停止すると発表した。
 このプロジェクトは、チャド・カメルーン石油パイプライン・プロジェクトの一貫で、地球の友インターナショナル、環境防衛基金など環境NGOが強く反対していたプロジェクトで、世銀が融資をしてきた。1999年に決定した世銀の融資総額は2億9,700万ドルで、今回の1億2,400万ドルは最後の支出分であった。
 世銀の融資は1999年にチャド議会が「石油収入管理法」を採択したことにより、はじまった。これは石油の収入を「優先部門」、すなわち医療保健、教育、社会サービス、地域開発などの部門に充当する、さらあに収入の10%を石油以後の対策に充てるという内容のものであった。この世銀の融資は、天然資源採掘産業一般に対する融資の世銀モデルとして、評価された。 
 しかし、昨年12月、チャド政府はこの法律を改正し、これまでは15%に抑えられていた政府の財源への還流を30%に増やす、さらに石油以後の対策費の10%を廃止して、これを国内治安や国境警備費に流用する、という内容にした。チャド政府は、財政赤字を解消しようとするものであると説明している。
 今回の世銀の融資停止はチャド政府が度重なる勧告にもかかわらず、改正を強行したことに対する報復措置であった。
 「チャド人権促進擁護協会(CAPD)」などチャドの市民社会と環境防衛基金などの国債環境NGOは、今回の世銀の措置を歓迎している。しかし、今回の世銀の措置はプロジェクトそのものが環境や人権に及ぼすマイナスの影響を除くことにはならない、とも言っている。融資差し止めはプロジェクトのキャンセルにつながるものではない。
 なぜなら、このプロジェクトの執行母体はエクソン・モービルなど国際石油資本のコンソーチアムであり、自力で石油の採掘を行っていけるからだ。
すでにこのプロジェクトはすでに住民の健康や収穫に影響を及ぼしている。しかし、石油会社も世銀もそれに対する調査を行っていない。チャドは世界で最も貧しい国の1つである。
 環境防衛基金のKorina Horta代表は、「世銀はこのプロジェクトに責任があり、Exxson-Mobileに対して強く公害対策を行うよう圧力をかけるべきである」と言っている。
 世銀は天然資源開発融資の条件として、貧困根絶を掲げている。チャドでの今回の措置は、ワシントンに本拠を置くNGOのシンクタンク「政策研究所(IPS)」によれば、これはナイス・ジェスチャーだが、シンボリックである。まるで馬が逃げた後で、馬小屋のドアを閉めるようなものだ」と評している。