DebtNet通信 (vol.5 #19)  
「ODAについての日本、EUの虚偽の報告」
2006年4月6日

 4月5日付けの『朝日新聞』によれば、05年の日本のODAが、前年比の47%増となり、131億ドルになった、と報道された。日本は額にして米国に次ぎ、世界第2位のODA拠出国となった。
 これは、パリにある先進国の経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)に報告された数字である。
 中身をよく読むと、前年に比べて増加した分の41億8,000万ドルは、(1)イラクの円借款債務の帳消し分の32億ドル2,000万ドル、(2)インドネシア向けの円借款が増加した分などであった。
 1999年6月のケルンでのG7サミットで、首脳たちは重債務貧困国の債務帳消しが決まったとき、「帳消しの費用はODAに換算しない」ことに合意したのであった。2002年、モンテレイでの国連開発金融サミットでもおなじことが決議された。
 したがって、日本が今回、イラクの債務帳消し分をODAに加算することは、「ケルン合意」や「モンテレイ合意」に反している。
 日本は今年06年もイラクの債務帳消しを行い、さらにナイジェリアの債務の帳消しも行うので、これらもODAに加算すると、高い水準を維持することになるだろう、と朝日新聞の記事は予測している。
 
 一方EURODADによると、EUもまた、ODAの水増し報告を行っているようだ。
 DACへの報告書では、EUは、05年、125億ユーロのODAを拠出したのだが、これは、年のはじめに公約した「ODAを途上国の貧困根絶に充当する」のではなく、もっぱら債務帳消し額、難民の居住建設費、ヨーロッパへの外国人留学生の教育費などに支出されている。EURODADはこれをODAの水増しだと批判している。
 DACのデータでは、EUのODAのうち100億ユーロはイラクとナイジェリアの債務帳消しに支出された。2国の債務は、貿易保険によるものである。これは民間企業が途上国に輸出をする場合、政府が掛ける公的保険であって、実質的には自国の企業に対する補助金であって、途上国の開発には使われていない。したがって、債務帳消しは貧困根絶ではない。EURODADは、これはモンテレイ合意の違反であると、非難している。
 同じく、これまで過去5年間続けてきたのだが、05年には8億4,000万ユーロをヨーロッパ国内の難民の住居の建設費用をODAに換算している。またヨーロッパでの外国人留学生の教育費10億ユーロ近くをODAに換算している。
 勿論、難民の住居や留学生問題は重要である。しかし、これは途上国へのODAではない。途上国には貧困根絶のための新しい、追加のODAが必要である。このことについて、昨年EU各国政府は、ODAを倍増し、さらに2015年までにODAをGNIの0.7%に達するようにするという歴史的な公約をした。2010年よりはじまり、それ以後、EUは年間380億ユーロのODAを拠出するはずである。しかし、実際は、このような水増しに憂き身をやつしているのである。
 とくに水増しが多いのは、フランス、ドイツ、英国の3カ国である。