DebtNet通信 (vol.5 #17)  
「ブレトン・ウッズ機構(BWI)の民営化へのさまざまな議論」
2006年4月6日

 最近、ナイジェリアが債務削減と自ら債務の前倒し返済をした。昨年末には、アルゼンチン、ブラジルがIMFの債務を前倒し返済した。さらにインドネシアがこれに続く気配を見せている。
 IM債務を完済すれば、当然IMFがこれらの国に課していた厳しい条件もなくなることになる。このような中所得国の傾向は、IMFの存在意義を問うことになる。
 世銀については、市場がカネ余りの状態にあり、また世界的な低金利の時代であるので、中所得国は、長期に借り入れられるとはいえ、高い利子で条件の厳しい世銀の融資を受ける必要がなくなった。
 一方、貧困国については、18〜9カ国と限られてはいるが、IMFが昨年、世銀が今年7月1日までにだが、ともにIDA債務の100%帳消しを行った。さらに、10カ国内外がこれに続いて帳消しを受ける予定である。債務を帳消しすれば、世銀はこれらの国に対する拘束力と支配力を失うことになる。
 以上のようなIMF・世銀の役割の変化につれて、これまでIMF・世銀のネオリベラルな政策を推進してきた人びとの中から、さまざまなBWIの改革案が吹き出てきた。そのいくつかを拾ってみた。

1)Jessica EinhornのIRDB民営化案

 彼女は世界銀行の元専務理事で、2006年1・2月号『Foreign Affiars』誌に「世銀を民営化せよ」という論文を書いている。
 世銀グループの最大の開発融資機関「国際復興開発銀行(IBRD)」は中所得国に対して、開発融資を行う機関であるが、これは「死につつある」と断言している。内部からの改革は不可能であるので、「廃止すべきである」と主張している。
 IBRDは理事の構成も、その権力バランスも、今日もグローバル経済にマッチしていない。その上、IBRDの長期固定融資というコンセプト自身、現在、市場で行われている証券化−ローン自体が市場で売買される―の趨勢にとって代わられている。
 Einhorn は、途上国のG20(20カ国グループ)が「賢人パネル」を設立し、中所得国の資金需要に見合った方途をさぐり、同時にIBRDを閉鎖するスキームを調査提言するべきだと言っている。彼女は、多分新しい金融機関は320億ドルを超える融資枠が必要ではないかと見ている。

2)Nancy Birdsall とKermal Dervisの「安定と成長のファシリティ」設立案

 2006年1月、Center for Global Developmentに共著で書いた提案である。IMF、世銀いずれの下に、あるいは両機関合同の下に、中所得国の重債務を削減する新しい「安定と成長のファシリティ(SGF)」を設けることを提案している。これは貧困根絶を目的とした 社会部門への支出と経済成長プログラムを両立させることを条件としたものである。
 このファシリティ(SGF)には、年間100〜200億ドルの資金が必要と予測される。
 資金提供国の負担はSGFに関わる利子を補助するのであって、これには、初年度には10億ドルの融資について2,000万ドルの資金が必要となる。この補助金については、中所得国が慎重なマクロ経済政策と貧困根絶と成長政策を同時に遂行するという約束をとりつけるための一種の触媒的な役割を持つと言っている。
 このファシリティがより安い利子で債務帳消しに資金提供することは、中所得国のMDG達成を保証することになる。

3)Mervyn Kingの「IMFはラディカルなオーバホールが必要」

 2006年2月26日付けの『サンデー・テレグラム』紙によると、King総裁はインド訪問中に、「IMFは、出資国政府から独立しなければならない。」と語った。また彼は、「IMFはその権威からして、WTOのドーハ・ラウンドが生活水準を上げ、貧困を根絶するように活性化できると信じている」とも語った。

4)『フィナンシアル・タイムズ』紙のMartin Wolf記者の記事

 同紙2006年2月26日付けの記事では、Martin 記者が、「IMFは国家の破産や外貨危機に対して、より有効であるべきである。また返済不履行の場合に借り手と貸し手の間の負担をシェアするべきである。改革については、理事は本国政府から独立しなければならない。また現在の経済状況に見合って、たとえば中国などからもリクルートすべきである。通信技術の発達により、理事は常駐する必要はない。また、専務理事は広く人材を公募すべきで、また6年任期で再任を禁止するべきである。