DebtNet通信 (vol.5 #11)  
「インドネシア政府がIMF債務を前倒して返済か?」
2006年2月17日

1.インドネシアがIMF債務を一括返済か?

 2月14日付けの『ジャカルタ・ポスト』紙によると、Sri Mulyani Indrawati(女性、元IMF職員)インドネシア蔵相が、2月13日、インドネシア議会の金融委員会の公聴会で、「インドネシアのIMF債務の返済スケジュールを前倒しにして、一括返済するという計画にゴーサインをだした」と語ったと、報じている。
 インドネシアの中央銀行であるBank Indonesia (BI)は、これまで調査したところでは、IMFへの債務を一括返済しても十分な外貨準備を保有している、と判断したのだという。そして、むしろ一括返済したほうが、元金と利子をこれから払い続けるより得だ、と述べた。
 インドネシアのIMFへの債務は78億ドルにのぼる。この債務を管理しているのはBIだが、これはインドネシアの外貨準備を支援するために借り入れたIMFのスタンドバイ・ローンである。
 1997〜2003年間に、IMFはインドネシアに250億ドルのローンを供与した。これはインドネシアの銀行の危機を救い、さらにインドェシアの巨額の債務を再編するためのものであった。しかし、このローンには、国営企業の民営化や政府の燃料をはじめとする日用品への補助金の削減などを義務付けた、多くの厳しい経済改革プログラムが付随していた。
 この条件に対する世論の批判は厳しかった。多くの専門家はIMFのプログラムの効果を疑問視しており、IMFのローンがスタンドバイの性格であるので、予算の作成において、さまざまな制約を伴っていた。
 さらに、Mulyani蔵相は、政府が前倒しをして返済するには、コスト面での利得があると言った。なぜなら、IMFの利子は、昨年の第3四半期にはそれ以前の4.31%から4.59%に上昇した。これは米国債の利子の上昇が原因である。しかもIMFはマージンとして、これに1.08%を加えている。
 昨年末、ブラジルとアルゼンチンというIMF債務の1、2位の大国がすでに前倒しして返済した。そのために、インドネシアはトルコに次いで第2位のIMF債務の大国になってしまった。つまり、インドネシアはIMFにとって、大きな収入源になったのである。これはインドネシアのような開発途上国にとって、不公平なことである。
 Mulyani蔵相は、「インドネシア政府は、外国の直接投資が今後インドネシアに流入するし、さらに国の財政収入は増えると見込まれるので、この前倒し返済計画を実施する能力は十分あると確信している」と語った。
 具体的な一括返済の額や時期については明らかではない。