DebtNet通信 (vol.5 #10)  
「G8モスクワ蔵相会議について」
2006年2月13日

 2006年2月10〜11日の2日間、G8蔵相会議がモスクワで開催された。日本のマスコミはエネルギー問題だけを報道しているが、実は重債務貧困国(HIPCs)の債務帳消し問題も重要な議題であった。

1.米国ジュビリー・ネットワークの呼びかけ

 G8蔵相会議直前、ジュビリー米国ネットワークは、「IMFは昨年末にHIPCs19カ国(G7が決めた18カ国のうち、勝手にモーリタニアを除き、さらにキルギス、ハイチ、エリトリアを加えた)の債務帳消しを決定したが、一方では、世銀はこれを17カ国に限定し、かつ帳消しのスケジュールも15ヵ月延期すると言っている」として、抗議の声を上げるよう呼びかけていた。
 IMF・世銀は2005年G7の呼びかけに対して、新たに「多国間債務救済イニシアティブMDRI」」と名づけて、HIPCs17カ国(G8が決めた18カ国のうちモーリタニアを一方的に除外)の多国間債務の帳消しを実施することになっていた。
 しかし、世銀は、(1)帳消しの対象を17カ国に限定し、さらにその実施を15ヵ月延期すると声明した。つまり、これら重債務貧困国は、ブルンディ、カメルーン、ギニア、シエラレオネのようにHIV/AIDSが蔓延している国であるにもかかわらず、債務の帳消しを早くとも2007年7月まで待たねばならないことになる。これはグレンイーグルズG7サミットの決定からいうと、2年の遅れとなる。
(2)IMFの債務帳消しが、2004年末までの債務をカバーするのに引き換え、世銀の提案は2003年末までの債務を対象にするとなっている。カメルーンやマラウイのように、延期とからんで、これらの国は債務の100%帳消しを受けた後も、世銀に2004〜2007年間の債務を負うことになる。
(3)昨年4月、世銀はハイチ、エリトリア、キルギス、ネパールの4カ国を新たにHIPCsに加えることを提案した。しかし、これらの国は、たとえば、西半球で最も貧しい国であるハイチの例では、債務帳消しを受けるのは、2009年まで待たねばならない。世銀のHIPCsの定義はあまりにも不確定である。
 英国政府ならびに国際NGOは、ミレニアム開発ゴール(MDGs)を達成するには、少なくとも100%帳消しの対象国としては60〜70カ国が該当し、さらにより多くの国の汚い債務や不法な債務を帳消しにしなければならない、と分析した。
 ジュビリー米国ネットワークは、さらに4月のIMF・世銀の春季会議に向けて、世銀に対して圧力を強めていくよう世界のジュビリー・キャンペーンに呼びかけている。

2.モスクワG8会議

 モスクワG8蔵相会議が、MDRIの実施について議論した際、出席していたウォルフォビッツ世銀総裁は、「今年7月1日までに、MDRIを完全に実施するための技術的作業は完了する予定である」と述べた。「アフリカや途上国の42カ国の政府は予算を国民の医療や教育に使うことと、債務返済に充てるべきか、という2者選択に迷うことがなくなるだろう」と語った。
 この言葉が果たして実行されるのかは、ジュビリー・キャンペーンの圧力にかかっている。

3.ロシアの提案

 2月11日、G8蔵相を迎えたクレムリンでのレセプションの席上でプーチン大統領は、「ロシアは、外部の災害に苦しんでいる最貧国の援助するために、2006年〜2010年の間、IMFに対して3,000万SDR(4、350万ドル)を拠出する」と提案した。 
 プーチンは、世銀に対しても、IDAの債務帳消し費用として、5億8,700万ドルを拠出すると付け加えた。
 またロシアはパリ・クラブ加盟国に対する債務について、119億ドルを前倒しにして返済すると声明した。

4.フランスの航空税について

 シラク大統領は、来る2月28日、パリで、開発資金に充てる航空税についての大臣級会議を開催する。参加するのは、昨年9月、ニューヨークで開かれた国連ミレニアム・レビューサミットにおいて、「開発資金のための革新的な資金源についての宣言」の署名国である。これには79カ国が署名した。これまでのところ金額については明らかではないが、少なくとも、英国を含む6カ国が資金を提供する意思を表している。