DebtNet通信 (vol.4 #7)  
4月1日債務国際キャンペーンの日
2005年3月28日


1)アルゼンチンの債務処理

  3年前アルゼンチンは、1,026億ドルの債務不履行(デフォールト)に陥った。これは、歴史上最大のデフォールトであった。債権者は世界中に広がっているアルゼンチン国債の保有者である。
  クッチナー大統領は、去る1月28日、アルゼンチンのデフォールト債務の処理を開始した。大統領は債権者に対して、国債の70%の“ヘアカット”、つまり削減を申し出た。これは、債券市場では、国債所保有者として歴史的な損失となった。
  その代わり、アルゼンチン政府は、10カ国に及ぶ1,026億ドルのアルゼンチン国債保有者に対して、418億ドルの新規国債を「スワップ」として発行する。つまり、1ドルの国債に対して、30セントの新規国債を発行するというものである。
  これに対して、「アルゼンチン国債保有者グローバル委員会」側は、拒否の構えを見せ、未加盟の保有者に対して、働きかけを行っている。
  その理由は、第1に、「グローバル委員会」は将来よりよい条件でスワップを受けることが出来ると期待している。第2に、アルゼンチン議会にMario CafieroやMaria Angelica Gonzales議員などが、アルゼンチンのデフォールト債務の大半は1976〜83年の軍事政権時代に生じた「汚い債務」であるとする法案を提出しているからでもある。
  一方、アルゼンチンの「汚い債務」の調査をしているAlejandro OlomosとDaniel Marcos
は、政府に対して、これが明らかになるまで、債権者に対する「スワップ」は停止するよう要求している。

2)イラク政府も「汚い債務」認定を要求

   パリ・クラブはイラクの債務の80%の帳消しに合意した。 しかし、Mahdi al-Hafez計画相は、95%の帳消しが必要であると言っている。一方、Abel Abdul Mahdi財務相は、イラクの債務の中に、「破壊と戦争」によって生じた「汚い債務」であると規定しようとしている。これは返済の必要がないはずだ、といっている。
  イラクは昨年12月半ばに、世銀に対して1億1,000万ドルを返済している。これは、新規の融資を受けるためである。しかし、イラクが戦争状態にあり、インフラが破壊された状態で、世銀は、なぜ返済させなければならないのかという疑問にこたえることができない。

3)ナイジェリア下院は「債務の返済を止める」決議を採択

  去る3月7日、ナイジェリア下院では、かねてから債務帳消しキャンペーンが要求してきた「債務の返済を止める」決議が採択された。
  こらは、政府に対して拘束力をもつものではないが、折から下院が2005年度の予算を審議中であり、その予算書には、10億ドルの債務返済額が含まれており、これを議会が検討する予定になっていた。
  下院の予算委員会のFarouk Lawan委員長は、「決議の採択によって、予算の修正が行われるだろう」と語った。これは、2国間公的債務のパリ・クラブ、民間債務のロンドン・クラブ、国際機関の債務への返済がすべてストップすることになる。
  しかし、上院の予算委員会のJohn Azuta Mbata委員長は「ナイジェリアが一方的に返済をストップすることは長期的に見て不利だとして、決議に反対である」と述べている。
  予算書の最終的可決は下院と上院の決議が同一化することを必要としている。そのため、上院の審議と両院の合意取り付けを待たねばならない。
  これまでナイジェリアは、340億ドルの累積債務の救済を要求して、IMFのプログラムの署名を拒否してきた。過去2年間、ナイジェリアはパリ・クラブへの返済をの半分しか支払ってこなかった。こうして債務救済を訴えてきたのだが一向に効果がなかった。
  今回の下院の決議は、4月のG7財務相会議に向けてオバサンジョ大統領のロビイングを側面から援助するものである。
  ナイジェリアは、当初HIPCsの対象国に入っていた。その後独裁者のアバチャ大統領が急死し、民主化されると、なぜかHIPCs対象国から外されたという経緯がある。ナイジェリアは重債務国であり、貧困層が多い。しかし、腐敗がはびこっているのと、IMFとの協定に署名していないことを理由に債務救済を受けることが出来ない。しかし、ナイジェリア側は、2003年に実施した補助金の撤廃、民営化、貧困根絶、財政均衡など一連の経済改革は、IMFのプログラムと同一のものである、と主張している。
  Lawan委員長は、「ナイジェリアの債務の大部分は1984〜1999年のアバチャ政権時代のもので、民主政権にその返済を求めるのはフェアではない」と主張している。
  しかし石油の価格の高騰で、200億ドルの外貨準備を保有し、60億ドルの財政黒字を記録しているので、救済を受けるのは難しいだろう。

4)IMFはインフレの原因としてアフリカ援助を批判

  英国のブレア首相は、アフリカの債務帳消しとともに、アフリカに対する“マーシャル・プラン”、つまり大量の援助を呼びかけている。
  これに対して、3月はじめ、IMFは、アフリカに対する大量の援助は「インフレを起こす」として反対した。一方、世銀のエコノミストたちは、IMFの「許容できるインフレを年間5%まで」とする主張を疑問視している。
  「グローバル・エイズ同盟(GAA)」は、たとえ、アフリカの政府が医師、看護師、ヘルス・ワーカー、学校の教師などにより多くの予算を投じ、その結果、インフレを起こしたとしても、十分にトレード・オフできると主張している。

5)4月1日をグローバル債務行動の日に

  4月15〜17日、ワシントンで開かれるIMF・世銀の春季会議に向けて、「貧困に反対する行動のグローバルな呼びかけ(GCAP)」は、4月1日を米国、日本、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダのG7国の大使館に対して、一斉に、重債務貧困国の債務の100%帳消しを要求する行動を起こすことを呼びかけている。
  とくに多国間債務の帳消し、「グローバル基金」への拠出、ブレア首相が提唱している「国際金融基金(IFF)」の設立などに反対している日本、ドイツ、フランスの大使館に行動を集中することになっている。
  以後、7月のG7サミット、9月の国連サミットに向けて同様な行動を起こすことになっている。

6)津波債務モラトリアムのいんちき

  1月のパリ・クラブでは津波被害国(インドネシア、スリランカ、セイシェル)の債務返済を「即時」、「無条件」でモラトリアム(停止)することを決定した。
  しかし、去る3月10日に開かれたパリ・クラの会議は、2005年12月31日まで返済を猶予するが、モラトリアムの条件は、債権国のそれぞれの国内法によって異なること、さらに、2005年に支払うはずの利息は、元金に加えられることになった。その利子率は、債権国それぞれが決めることになっている。
また2005年に支払うはずの返済額は1年の猶予の後、すなわち2007年から5年間の間に支払わねばならない、と変更された。 これは、1月の決定と大いにことなり、被災国に示した債権国の「寛容」と「連帯」とは縁もゆかりもない。
  英国、イタリア、ドイツなどは、モラトリアム中の2005年分についてはODA債務に限定されるがその利息は無料にすると言っている。しかし、日本、オーストラリア、オランダというインドネシア最大の債権国は、パリ・クラブという多国間協議の場で、モラトリアムを行うこと自体に、1月の会議の時にすでに反対していた。 これでは、なぜパリ・クラブの会議を開いて協議をすることの意味がない。
  インドネシアはパリ・クラブに対して2002年末で415億ドルの債務を負っている。
これはパリ・クラブが把握している最終的な数字である。インドネシア政府が3月の決定を受け入れるとすると、2007年以後、毎年約30億ドルを返済しなければならない。
  インドネシア政府は、近くMDGsの達成のためのマスター・プランを発表するのだが、少なくとも、その達成のためには、現在の債務の50%を帳消しにしなければならないと推計される。