DebtNet通信 (vol.4 #5)  
インドネシアの債務について
2005年3月22日


1)津波とパリ・クラブ会議

  昨年暮のインド洋津波地震以後、今年1月に開かれたパリ・クラブ(債権国会議)会議では、インドネシアの債務返済を1年間猶予することを決定した。しかし、インドネシアは津波の被害を受けた公共部門の再建資金への新しい融資と債務のリスケを要求した。インドネシアは1997年の通貨危機の際にIMFから受けた救済融資の期限が2003年に終了した。そこで、今度受ける融資にはIMFの条件を付帯ないよう要求した。
  ウォルフォンセン世銀総裁は、津波の被害国には債務返済の猶予よりも、帳消しのほうが「ベターである」と述べた。しかし、日本の谷垣外相は、帳消しよりも猶予のほうが良い。なぜなら「債務帳消しは、債務国の新規借款能力を損なうことになる」と述べた。
  インドネシア中央ぎんこうによれば、2004年3月末のインドネシアの対外債務総額は、1,360億ドルに上り、これはGDPの約40%に達する。そのうち、公的債務は820億ドルである。スタンダード&プーアによれば、インドネシアは年間65億ドルの債務返済能力を持っているという。
  日本は対インドネシアの最大の援助国であり、2003年には10億ドル以上のソフトローン(円借款)を供与した。
 
2)英国は武器輸出債権の帳消しを拒否

  英国企業はこれまで、インドネシアに武器を輸出してきた。英国政府はこれを政府の貿易保険でもって取り立てていた。その結果、これはインドネシア政府の英国政府に対する公的債権になった。
  津波後、英国政府はこの武器輸出にかかわるインドネシアの債務の帳消しを拒否している。その額は2004年11月末で、5億5,100万ポンドにのぼる。これはすでに1998年に返済不能になっている。
  2005年1月13日、英国議会で、インドネシア政府が英国のAlvis社から購入したスコーピョンとストーマー装甲車(最近、アチェの戦闘で使用された)の代金8,070万ポンドとBAESystems社からのホークス戦車の3億8,270万ポンドの代金から生じた債権が暴露された。その前日、パリで開かれたパリ・クラブの会合で、インドネシアに対する債権は帳消しではなく、単に返済猶予が決まったばかりであった。英国議会は独裁政権に対する武器輸出を禁止している。

3)債務の対GDP比はやや改善か?

  今年2月、ムーディは、債務のGDP比がやや改善されたとして、インドネシアへの投資の安全度を、それまでの「安定した」から「前進している」に上げた。
  その理由として、ムーディは(1)政府が財政赤字を抑制していること、GDP成長率が比較的高いこと、それにルピア安がつづいていることなどを挙げている。さらにムーディは、このような状態は今後数年続くだろうと言っている。
  しかし、インドネシアの経常収支に対する債務の割合は非常に高い。このことがインドネシアの不安定性の理由になっている。そのためインドネシアへの外国投資が経済成長にとって決定的である、と付け加えた。
  ユドヨノ新政権は、法制度の改革や腐敗防止政策など投資環境の改善に取り組んでいる。しかし、これがどれほどの効果を生みだすかは疑問であると、ムーディは言っている。
インドネシアのGDP成長率は2003年の4.88%であったが、2004年は5.13%を記録した。これには外国投資と国内消費の伸びが寄与している。この状態が続けば2005年の成長率は5.5%と予測される。