DebtNet通信 (vol.4 #23)  
多国間債務帳消しについてのEURODADの見解
2005年10月29日

 9月のIMF・世銀の年次総会で決定した重債務貧困国18カ国の多国間債務の帳消しについて、ブルッセルに本部を置く債務問題のネットワークEURODADが以下のような見解を発表した。

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 まず、この措置は、重債務貧困国(HIPCs)の100%をカバーするものではないし、またその債務の100%をカバーするものではない。しかし、政治的な意思があればHIPCs以外の国の帳消しも可能であることを示している。
 これは、これまでの国際的なキャンペーンの結実である。しかしキャンペーンは、この決定が持ついくつかのあいまいな点についてのIMF・世銀の解釈をめぐって監視をしていかねばならない。

 あいまいな点:

1) 債務帳消しの実施を阻むことになるような新しい「条件」が課せられているのか?
2) 帳消しの対象が元金の100%なのか、あるいは段階的な帳消しなのか?
3) 帳消しのデッドラインは?IMFは年内と言い、世銀は2006年7月と言っている。
4) 債権者側は十分な追加の資金供与に賛成しているのか?
5) 恩恵を受ける国の純益は何か?つまり帳消し以後、世銀の融資が減るようなことにならないのか?

 IMFの24カ国からなる国際通貨金融委員会(IMFC)のゴードン・ブラウン英蔵相は、IMFの理事会がG8の提案をすべて受け入れた、と記者会見をした。さらに世銀の24カ国からなる開発委員会のTrevor manuel (南ア蔵相)Paul Worfovitz (世銀総裁)は、記者会見でG8の合意は、いまやG184の合意となった、と発言した。しかし、両委員会のコミニケにはあいまいな点が多い。
 
新しい条件について

 ガバナンスについての追加の条件が付けられたようだ。IMFCのコミニュケには、「完全な債務帳消しを受ける国は高い水準を持ったガバナンスの政策を立てねばならないといい、一方開発委員会は良い経済的なパーフォーマンスとグッドガバナンスを維持しなければならない、と言っている。Trevor Manuel は「これは新しい条件でなない」と言っているが、一方では「フォローアップ」だとも言っている。フォローアップとはどのようにも解釈できる言葉である。

追加の拠出について

 開発委員会のコミニケには、先進国が(世銀の)債務帳消しに追加の資金が必要であるということに合意したと書かれている。G8の蔵相が世銀総裁に送った書簡には、将来、政府が「IDAの定期の拠出金以外に追加の資金を拠出する」と書いてあった。これは市民社会がアドボカシイを行う時の、テーマの1つとなる。

どの国が帳消しをうけるのか?

 IMFCのコミニケには、対象国は、HIPCsの中からリベリア、ソマリア、スーダンの3カ国を除いた35カ国に、低所得国としてカンボジアとタジキスタンの2カ国を加えた計37カ国、と書かれてある。これはHIPCs以外の国が債務帳消しの対象に入ることの前例となった。

債権者から除かれたもの

 なぜ米州開発銀行(IADB)の債務帳消しが除外されたことについて、記者に聞かれたデラトIMF専務理事は「公平な取り扱いは定義の問題だ」と答えたが、なぜIADBが除外されたかについては明確な説明はなかった。

結論

 これまでG8合意がたびたび反故にされて来た歴史からして、今回の決定について、各国のキャンペーンは自国の政府に対して以下のことを追及していく必要がある。

1) 政府が何を約束したのか?
2) IMF・世銀のコミットメントについての理解?
3) IM・世銀の理事会に提案する詳細な実施内容は?