7月、スコットランドのグレンイーグルスで開かれたG8サミットにおいて、重債務貧困国が抱えているIMFと世銀への多国間債務を帳消しにすることが決議された。ただし、帳消しの対象になるのは、すでに1995年秋にIMF・世銀が認定した42カ国のうち、たったの18カ国で、さらに条件を満たせば、これに20カ国を追加する、というのであった。
帳消しの資金として、IMFは保有する金を売却する、世銀グループの中では、貧困国がもっとも多く抱えているIDA債務については、先進国からの拠出金で賄うとなっていた。
G8サミットでの決議が、IMF・世銀によってどう実施されるのか、この間NGO側がIMF・世銀に対して、猛烈なキャンペーンを展開し、圧力をかけてきた。とくに、世銀は「先進国からの新しい資金供与がなければ帳消しはできない」として、これまで抵抗してきた経緯があり、さらに英国政府とOXFAMが共同して各国に拠出するように圧力をかけていた。これまでジュビリーの側は、「世銀自身の利益金や引当金などを拠出すべきである」と主張してきた。
05年のG8サミットの決議は、「先進国からの拠出金で賄う」となってきた。これについては、米国や日本が強く反対していた。
ワシントンで9月24〜25日に開かれたIMF・世銀の合同年次総会では、国際通貨金融委員会(24カ国)、合同開発委員会(24カ国)において、議長であるゴードン・ブラウン英蔵相は、38カ国に対する多国間債務の100%帳消しが決定された、と語った。
その内訳は、IMF分が約50億ドル、世銀のIDA(国際開発公社、貧困国にたいして、無利子長期の開発融資)分が約420億ドル、アフリカ開発銀行(AfDF)が約100億ドル、計570億ドルであった。しかしこの額はあくまで、名目債務であって、実質的には帳消し総額は180億ドルにとどまる。
18カ国については、帳消しは今年末までに実施される。これによって、18カ国は少なくとも、返済すべき元金と利子10億ドル(年間)が浮くことになる。
18カ国は、ベニン、ブルキナファソ、エチオピア、ガーナ、マダガスカル、マリ、モーリタニア、モザンビーク、ニジェール、ルワンダ、セネガル、タンザニア、ウガンダ、ザンビアのアフリカ14カ国と、ボリビア、ギアナ、ホンデュラス、ニカラグアの4カ国である。
先進国は、このIDA分の420億ドルの帳消しの資金を拠出することになっており、G8がその70%を負担することが、グレンイーグルスで決まっていた。米国は約25%、英国が15%、そして日本が13%で、日本の拠出額は約55億ドル(約6,000億円)となる。
日本はこれに同意した。さらに、日本はアフリカの民間企業育成のために、世銀の国際金融公社(IFC)などを通じて、約300万ドルの資金を出すことを公約した。
残っている問題は、(1)この帳消しは、これまでジュビリーが要求してきた貧しい国の返済不可能な、公正でない債務の100%帳消しではない、ことである。(2)債務帳消しに条件が付いていることである。
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