DebtNet通信 (vol.4 #19)  
パリ・クラブがナイジェリアの債務を帳消し
2005年7月12日

  6月29日からパリで開かれていたナイジェリアの債務に関するパリ・クラブ19カ国の会議は「ナイジェリアに関する債務救済パッケージ」に合意した。その内容は、ナイジェリアの債務350億ドルの中で、180億ドルを帳消しにする、さらにナイジェリアが残りの債務を石油輸出の代金でもって買い戻す、というものである。
   ナイジェリアの債務帳消しは、1994年のG7サミットで合意した「ナポリ条項」に基づくものであるとされる。それは、貧困国の債務の67%を帳消しにするというものである。
   パリ・クラブの議長である英国のブラウン財務相は、「向かう6ヵ月間以内にナイジェリアは、債務のBuy-Back を含めて100%の帳消しを受けるだろう」と述べた。
   ナイジェリアの350億ドルの債務のうち、パリ・クラブ19カ国が保有しているのは310億ドルである。1992年以来、ナイジェリアは融資を受けていない。しかし、その間債務返済を続けており、その総額は80億ドルにのぼる。
   ナイジェリアはIMF・世銀のHIPC(重債務貧困国)の対象国になっていない。にもかかわらずナイジェリアが債務帳消しを要求してきたのは、債務の大半が腐敗した軍事独裁政権によって生み出された「汚い債務」であるからであった。
   パリ・クラブによれば、今回の措置は2003年以降ナイジェリアが経済改革プログラムを忠実に実施してきたことと、ナイジェリアが石油代金を債務の解消に使用することを認めた、ことによると言っている。
  一方、ナイジェリアのオバサンジョ大統領は国営テレビに出演し、ナイジェリア政府がパリ・クラブの債権者たちに経済改革の実績を認めさせ、15年に及ぶ軍事独裁政権が作り出した債務を放棄させたことを自画自賛した。
  英国の債務帳消しキャンペーンのSony Kapoor は、「ナイジェリアの債務の買戻しスキーム、さらに今回の措置を100%帳消しと呼ぶことは、大きな間違いである」と批判した。
  彼は、「ナイジェリアのような貧しい国が、債務返済をやめるといって債権者たちを脅迫し、比較的だが強い立場で交渉して債務救済を獲得したということは、賞賛すべきことである。
  しかし、注意すべき点がいくつかある。その第1は、この措置がIMFの監視付で進められることを合法化したことである。とくにIMFがナイジェリアにまったく貸していないにもかかわらず、その条件を押し付け、政府の政策をコントロールすることができるとした点である。IMFは、7月中にナイジェリアの貧困戦略アセスメントについて協議することになっている。
  第2、ナイジェリアはこれまで、年間10億ドルを返済してきた。しかし債務買戻しスキームになると、ナイジェリアは2005〜6年間に30〜40億ドルを支出しなければならない。これは、長期的に見れば良いかもしれないが、短期的にはネガティブな現金のフローとなる。とくにナイジェリアはエイズ対策など、人道的な支出を緊急に必要としている。
  第3、エクアドルでは石油収入の70%を債務返済に充てるという法律があったが、新しい財務相が、これを70%社会的部門に支出するという法律に変えた。しかし、ナイジェリアが買い戻しに石油収入を充てるというのは後退である。
  第4、ナイジェリアははるか以前にナポリ条項による債務帳消し(67%)を受けるべきであった。ナイジェリアはこれまでに返済してきた何十億ドルもの額を差し引くように要求すべきである。そうすれば、多分、75%の債務帳消しを受けることになるだろう。
  第5、以上のことから、ブラウン財務相がこれを100%帳消しと呼ぶのは、ペテンである。