DebtNet通信 (vol.4 #14)  
多国間債務帳消し合意についてのEURODADの解説
2005年6月29日


 EUの債務キャンペーンのネットワークであるEURODADは、6月のロンドンでのG7蔵相で重債務貧困国の多国間債務100%帳消し合意について、Gail Hurley以下のようなが解説をおこなった。
 市民社会の団体は慎重な歓迎の意を表明はしたが、ブラウン英蔵相が自画自賛するほど、「歴史的に最大規模の合意」ではなく、十分なものではない。またいくらかの憂慮すべき「条件」がついている。
 6月10〜11日ロンドンで開かれたG7蔵相会議はこれまでになくマスコミの注目を集めた。これは世界中の債務帳消し運動が国際的なキャンペーンを繰り広げた結果であった。その結果、G7政府は、これまでの債務救済措置が十分ではなかったこと、そして、新しい措置が必要であることを認めざるをえなくなった。
 
1. 積極的に評価すべき点

(1) ロンドンの最終案にIMFの債務が含まれたこと。
(2) 恒常的な債務の元金の帳消しであること。
(3) 18カ国(HIPCイニシアティブで完了点に達した)という限定的な国の数が
将来増えるということが示唆された。それは決定点に達している9カ国も、2〜3年のうちに帳消し措置を受けることが出来る。

2. 欠陥点

(1) G7蔵相の帳消しは、宣伝ほど慈悲深いものではない。テキストの曖昧な部分を剥いでいくと明らかになるのは、債務国は帳消しを受ければ、それだけの額のIDA融資を減らされることになる。
 そして、新しくIDA融資を受けるには、IMFと世銀の条件を満たし、政策を実行しなければならない。さらに、G7は新しく腐敗防止とグッド・ガバナンスの条件を追加した。

要約すると、今回の債務救済は、ブラウン蔵相が述べたような「G7の蔵相たちが債務、開発、医療、貧困などの課題で行った歴史的な合意」ではないようだ。英国ジュビリー債務キャンペーンが言うように、合意は「100%の帳消しではなく、10%に過ぎない」のである。
そして、この合意には中所得国の重債務の救済は入っていない。

第1に、このG7蔵相の帳消しの合意事項は、今年9月に予定されているIMF・世銀の年次総会で決定されることになっている。
第2に、G7国以外のIDA拠出国がIDAの債務帳消しに必要な費用を拠出することに合意しなければならない。

EURODADの分析では、18カ国の債務帳消し総額は400億ドルであり、残りの決定点に達している9カ国の分は110億ドルである。しかし、ミレニアム開発ゴールを達成するためには、少なくとも低開発国62カ国の債務帳消しが必要である。