DebtNet通信 (vol.4 #12)  
G7蔵相会議が重債務貧困国18カ国の多国間債務帳消しに合意
2005年6月28日

1. G7蔵相の合意の内容

 来る7月6〜8日、スコットランドのグレンイーグルスで開かれるG7+ロシア首脳会議を前にして、6月10〜11日、ロンドンでブラウン英蔵相を議長としたG7蔵相会議が開かれた。
 ここでは、アフリカの貧困が最大の議題となった。重債務貧困国の債務に関しては、以下のような合意を見た。

(1) HIPCイニシアティブで完了点に達している重債務貧困国18カ国の債務の10
0%帳消し。
ベニン、ブルキナファソ、エチオピア、ガーナ、マダガスカル、マリ、モーリタニア、モザンビーク、ニジェール、ルワンダ、セネガル、タンザニア、ウガンダ、ザンビアなどのアフリカなどの14カ国、ボリビア、ガイアナ、ホンデュラス、ニカラグアなどのLA4カ国。
(2)さらに現在決定点に達している9カ国についても、完了点に達したときに同様の帳消しをうけることが出来る。将来さらに20カ国の帳消しも可能。
(3)帳消しの対象は世銀、アフリカ開発銀行多国間債務であり、これまで米国が反対していたIMFも含まれた。  
(4)これら帳消しについては追加の資金供与が必要。
(5)帳消しは元金であって、債務の返済分ではない。
(6)帳消しの総額は540億ドルと推定される。
(7)米州開発銀行の債務は帳消しの対象から除外された。ちなみにLAの低開発国の年間債務返済額は33億ドルにのぼっている。
(8)ナイジェリアの債務については、「パリ・クラブの枠内で、公正で持続可能な解決をおこなう」という漠然とした約束をした。
 これについては、ナイジェリアのFarouk Lawan下院金融委員長は「G7蔵相はナイジェリア議会が求めている100%、無条件の債務帳消しにはいたらないが、ナイジェリアの債務の存在を明らかにしただけでも前進である」と評価した。

2. 合意に至るまでのG7各国の動き

(1) 英国

政府の立場
ブレア首相が今年1月、ダボスの世界経済フォーラムでビル・ゲイツ、ボノと並んで記者会見を行い、「アフリカの貧困根絶」を訴えた。同時のブラウン蔵相は、2005年から20015年の間、「国連ミレニアム開発ゴール(MDG)」の達成のために、重債務貧困国20〜24カ国の多国間債務の返済を免除する方針を打ち出した。しかし、2015年以降、債務国は再び、IMF、世銀にたいする債務返済を開始する。
この場合、IMFはケルン合意にもとづいて保有する金を売却する、世銀の債務に関しては、G7国からの拠出金で賄うことを提案。
そのために、英国、カナダ、オランダ、アイルランド4カ国が共同して、これから10年間にわたって、17億ドルの拠出を公約し、他のG7国に対しても要求した。
米州開発銀行の債務の帳消しを除外。この場合、HIPCsの中のボリビア、ニカラグア、本デュラスなどラテンアメリカの米州開発銀行への債務が対象から外されることになる。
対象国18カ国はIMF、世銀のいう民営化、自由化、財政引き締めなどを含むグッド・ガバナンスに違反した場合、帳消しは差し止められる。

ジュビリー債務キャンペーンの運動
G7各国の蔵相にたいして、3万枚の葉書を送った。世界債務デイ(5月16日)にロンドンのG7の大使館にたいして100%債務帳消しを要請。
世界債務デイにブレア首相に債務帳消しを要請する8000枚の手紙とカードを提出。
グレンイーグルスG8サミットに向けて、7月2日、エジンバラで債務、貿易、援助をテーマとした大規模デモを準備。

(2) 米国

政府の立場
ブッシュ大統領は、多国間債務を帳消しする。この場合、IMFの金売却に反対、世銀についてはその準備金を帳消しに充当する。IDAを融資からグラントに変えることを主張。
ジュビリー米国ネットワークの活動
とくにキャンペーンの対象を議会のロビイングに絞った。共和党、民主党、そして上下議員にたいして、連日、電話、Fax、メールなどで要請行動を行った。その結果、低開発国50カ国を対象にした「ジュビリー法案」が議会に提出された。
 一方、米国籍の多国籍鉱山会社のニューモント社がIMFの金売却に反対していたので、同社に対する抗議のキャンペーンを行い、宗教指導者連名の要請文などを送り、ついにその態度を変えさせた。

(3) ブレア首相とブッシュ大統領の会談

 G7蔵相会議の直前にブレア首相がワシントン入りをして、米英サミットが開かれた。ここで、重債務貧困国18カ国の多国間債務の帳消しについての米英2国間の合意を見た。
帳消しの対象となる機関は、IDAとアフリカ開銀であり、IMFについては明確ではない。米国は、IMFの金の売却が、金市場の混乱を招くとしてまだ消極的である。
しかし、18カ国の年間債務返済額中、IMF分は50%にのぼっていることから、IMFの債務帳消しは重要な課題である。
米国はIDAとアフリカ開銀の債務帳消しの費用として今後3年間で3億ドルの拠出を行うことに合意した。これは第14次IDA拠出の枠外の拠出となる。しかし、この拠出がIDAを通じて行われ、18カ国に向けられるものではない。ブッシュ大統領はこの3億ドルの拠出金の支出を議会に諮っている。

 米英2国間の合意の詳細
1)
HIPCsの完了点に達している18カ国。決定点に達している残りの9カ国が
対象の候補となりうるが、ナイジェリアは除外される。
2) IDAとアフリカ開銀の債務の元金を帳消し。債務返済分ではない。
3) これによって2005年、18カ国のIDAとアフリカ開銀への債務返済分として、4億500万ドルが浮く。2005〜2015年間、毎年6億9600万ドルが浮く。
4)2005〜2015年、元金の帳消しに要する11年間の費用は総額およそ77億ドルと予想される。

(4)フランス、ドイツ、日本
1)
 帳消しの対象国は5カ国とする。モーリタニア、マリ、エチオピア、ガイアナ、ニジェール。
2)債務救済は一時的なものとする。対象国の債務が持続可能になった場合、帳消しを停止する。
3)IDAとアフリカ開銀の債務に限定される。
4)債権者の共同責任といった政治レベルの判断は入れない。
5)MDGsの資金だとか貧困根絶などの資金として考慮しない。