DebtNet通信 (vol.4 #10)  
EU各国のODA検証
2005年5月10日

 4月12日、EUは全体として、また加盟各国がミレニアム開発ゴール(MDGs)の達成に向けてどのような努力をしているか、とくに途上国政府にたいするODA支出について検証する一連の報告書を発表した。
 これは来る9月にニューヨークの国連サミットに向けて2002年3月メキシコのモンテレイで開かれた国連開発金融サミットでのEUのコミットメント(2002年3月16日のEUサミットでODAの額と質を決めた「バルセロナ・コミットメント」でもある。)をいかに実施しているかを検証するものである。
 これは5月26日、ブルッセルで開かれるEU閣僚会議で議論される。

報告書

 EU加盟国政府のMDGsに向けた実施状況は非常にスローである、というのが一般的な評価である。とくに「ODAの効果」についての報告では、EUは「小心な巨人である」とまで言っている。また加盟各国は、「MDGsのコンセプトを明確に理解していない」とまで酷評している。
 このようにMDGs達成に向けて進歩がみられないのは、政策に欠陥があるのではなく、政治的な意志がないことにある。EUはODAについては、より一層、協調すべきだ。なぜなら、EUは他の分野、たとえば、安全保障の面では大いに協調できているから。
 一方、EUは先進国のなかで最大のODA拠出国である、と評価している。
 報告書に欠けているのは、ODAの供与にあたって、ドナーから途上国政府に課している「条件」を撤廃することに触れていない点である。これは、2003年2月15日、イタリアのローマで先進国、途上国、国際機関の代表が集まって、MDGsについてのフォーラムを開き、合意した文書である「ハーモナイゼーションに関するローマ宣言」に反する。
 このときの合意に基づき、EUは、モロッコ、モザンビーク、ニカラグア、ベトナムの4カ国で「EUハーモナイゼーション・パイロット・イニシアティブ」を発足させ、ODAについてのロードマップと共通のガイドラインを実施していくことになっている。これについての実施状況はまちまちで、ニカラグアとモロッコについてはあまり進んでいない。

モザンビーク:「貧困削減戦略」については15カ国が被援助国の財政支援についての共通理解メモランダムを作成している。

ベトナム:EU加盟国はハーモナイゼーションについての共同行動計画を作成している。

ニカラグア
:EU加盟国10カ国がニカラグア開発計画にたいする共同援助計画の交渉に入った。2005年度財政について良い結果が出ることが見込まれる。

モロッコ:ドナーたちはハーモナイゼーションについて協議中である。水の部門についてのドナーのハーモナイゼーションについては良い結果が出る見込み。

インフォーマルなハーモナイゼーション・イニシアティブ

 EU加盟国の中にある「北欧イニシアティブ」のようなインフォーマルなネットワークで協議が続けられている。たとえば、2003年、北欧がハーモナイゼーションについての協定をザンビアと結んだことが報告されている。北欧の使節団がザンビアを訪れ、行動計画を策定した。また2004年4月、そのフォローアップの使節団が再訪し、実施状況を検証した。これがモデルとなって、ドイツ、世銀、UNDPなどが同様な行動計画の協定をザンビアと結んだ。

国別報告

英国
2004〜5年、ODAの44%を「貧困削減財政支援(PRBS)」に充てられる。タンザニア、モザンビーク、ウガンダにはPRBSがODAの主流になっている。
スペイン
ODAの「バスケット的な資金供与」や予算ごとの支援などはまだ本格化していないが、これからやろうとしている。たとえば最近モザンビークと「保健SWAP」に署名した。
ギリシア
ODAは主として小規模プロジェクトやプログラムに向けられてきた。しかし、貧困削減戦略にたいするODA供与としての予算ごとの支援を今後増やしていく。
フィンランド
2004年の開発政策はセクター毎のPRSPの予算ごとの支援などプログラムに基づいた協力を増やしていく。そのガイドラインを発表した。
ドイツ
PRSPに対する国際金融機関との合弁援助や予算ごとの支援など、部門毎のプログラムや「バスケット的な資金供与」を中心としている。
フランス
予算ごとの支援を可能にするように実施要綱を作成している。ブルキナファッソが予算策定においてPRSPに沿ったものにするように支援している。
ベルギー
状況が許せば、さまざまな形の予算ごとの支援を考慮中である。
デンマーク
ODAは総合的、あるいは部門ごとに供与される。

結論として、EU加盟国は、これまでの個別のインフラ・プロジェクトに対するODA供与から保健、医療、教育などの部門ごとへの支援やPRSPに基づいた途上国の財政(予算)に対する援助にシフトしていると、言える。

それは2015年のMDGsの達成に向けた努力といえよう。