DebtNet通信 (vol.4 #1)  
英蔵相「貧困根絶を05年の課題に」
2005年1月5日


 1月1日から、英国はG7サミットの議長国となる。今年のG7(G8)サミットの開催地は、7月6〜8日、スコットランドのエジンバラとなる。
 しかし、英国のブレア首相はDavid Blunkett内務大臣のスキャンダルに忙殺されている。また4月に予定されている総選挙に気もそぞろで、サミットの準備どころでない。
 一方、労働党内ではブレアのライバルであるゴードン・ブラウン蔵相にとっては、G7サミットは彼の政治的指導力を発揮できる良いチャンスとなっている。内相のスキャンダルとそれによる内閣改造の最中、ブラウン蔵相は米国を訪問し、ブッシュ大統領に対して「途上国の貧困を解決するための国際的な協調行動の必要性」を情熱的に説いた。
 「2005年の最大の課題は、学校に行けない1億1,000万人の子どもたち、治療すれば治る病気で毎日死んでいる30,000人の子どもたち、1,100万人のエイズ孤児たち、これらを救済することである。我々はもはや、知らなかったと言って済ますことはできない」とブラウン蔵相は説いた。
 またブラウン蔵相は「1月1日、英国ではOXFAM、Christian Aidなど多くのNGOによる“Make Poverty History”キャンペーンがスタートする。これに私も協力するつもりだ。その機会に私は開発についての大演説をするつもりだ。続いて、EUの蔵相会議が開かれるが、そこでも私は開発協力問題を議題にするつもりだ。(ちなみに英国は、05年後半にはEUの議長国になる。)また、同じく1月にはアフリカを歴訪する予定である」と、1月の彼のスケジュールを発表し、意欲満々のところを見せた。

 以下は、ブラウン蔵相が2004年12月20日、『インディペンデント』紙のSteve Richards記者の「月曜インタービュ」に対して答えた内容である。

1) アフリカの最貧国の債務の半分はIMF、世銀、アフリカ開銀など多国間債務である。英国はこれら多国間債務の100%帳消しを提案するつもりだ。これまで、これら多国間機関は債務を帳消しにすることは不可能だと言ってきた。しかし、英国が2国間債務を帳消しにしたではないか。多国間機関もできないことはない。もし、これら最貧国の多国間債務が帳消しになれば、債務問題は完了したことになる。そして失われた80年代、90年代を回復することができる。
2) 開発のための新しい資金の供与を保証するために「国際金融ファシリティ」の創設を提案するつもりだ。なぜなら、ここ20年間、援助は減少傾向にあるが、一方では、すべての子どもが初等教育を受け、幼児死亡率を半分に下げ、貧困を半分に減らすという目標(MDG)を達成しようとするならば、年間500億ドルの追加の資金援助が必要だからだ。
3) 05年、英国はG7議長国として、貧困国との貿易拡大を推進する。ブッシュ大統領はこれに対してあまり乗り気ではないようだが、これは米国の協力を必要とする。ブッシュ大統領はメキシコのモンテレイで開かれた国連の開発資金サミットに出席し、保健、教育、貧困根絶に必要な資金援助をするには、被援助国が改革に着手しなければならないと述べた。たしかに、英国内でも、国際的にも、「援助が無駄に使われており、援助には国内の改革が必要だ」という声が上がっている。
   一方では、援助は過去の行為に対する賠償だと言う人もいる。私は「援助は投資だ」と考える。援助が増えれば、貿易の余力も高まるし、ワクチンの投与も増えるし、学校も教師の数も増えるからだ。

 ブラウン蔵相は、このインタービュで、第三世界の貧困根絶が05年の最大課題だと
主張している。これは、05年の英国総選挙において、彼が、労働党の選挙キャンペーンから離れて、超党派的存在になっている、という見方もできる。