DebtNet通信 (vol.3 #34)  
米国ジュビリーの英政府案に対するコメント
2004年12月16日


 米国ジュビリーは、12月14日、英国政府の「多国間債務の100%帳消し案」についてのコメントを発表した。その内容は、米国ジュビリーが、12月8日の「債務のグローバル行動デー」に際して発表した声明と同じである。

米国ジュビリーのコメント

英国政府案の積極面

1. 英政府が現在のHIPCs債務救済の枠組みを超えて多国間債務の100%帳消し容認したことを歓迎する。100%帳消しは、米国ジュビリーがこれまで要求してきたところである。
2. 英政府が具体的な提案を公表し、それを透明性のある形で広くコメントを求めたことを歓迎する。
3. 債務帳消しの対象国を現在のHIPCsプログラム以上に拡大することを英政府が認識したことを歓迎する。 
4. 債務帳消しにIMFの金を使うことを支持していることを歓迎する。

いくつかの憂慮する点

1. 対象国について
英政府が提案する対象国の数は十分でない。英政府は対象国を「完了点に達した国」に限定している。これはザンビアやカメルーンなどIMFの条件を満たそうとして何年もの間努力してきた10数カ国を除外することになる。
米国ジュビリーは、人間が生きていくためのニーズを必要としている貧困国のすべてを対象国にするよう呼びかける。少なくとも、50カ国が対象となるべきである。
現在の米国の財務省の立場は、HIPCs42カ国すべてが対象になるとしている。これは米国ジュビリーにとってはまだ不十分であるが、英政府の提案に比べると2倍である。

2. 条件について
条件についての英政府の立場は曖昧であり、明確さを欠く。英政府の提案は、重大な信用上の問題(腐敗や軍事費への転用など)があった場合にのみ帳消しは取りやめになるとしている。しかし、これを判定するのはIMF・世銀であるということから、これは拡大して解釈され、現在のHIPCsイニシアティブのように経済的、あるいは他の条件も加わることを恐れる。さらに、より根本的なことは、英政府の提案ではすべての貧困国に、IMFのPRGF・世銀のPRSCの融資に付随した厳しい経済的条件が残ることである。そして、多分、英政府の提案ではHIPCsすべての国が対象にならず、経済的条件は残るであろうということである。

3. 債務帳消しの資金について
英政府はIMFの金の使用を容認していることは良いことだ。1999年にすでに行われた市場外の売却/買戻しメカニズムであるととくに述べているとはいえ、英政府はより多くの金額を保証するために段階的に売るというオプションをあらかじめ否定している。
債務帳消しの資金源についての英政府の最も重要な提案は、先進国が世銀の債務帳消しの資金を拠出するということである。これについて米国ジュビリーは以下の3つの憂慮点を挙げる。

(1) 英政府の提案は債務国の債務の元金を帳消ししない。
(2) これは2国間の債務がすでに帳消しにされているところから、債権者のバードンシェアリングの原則に反する。資金が豊富なIMF/世銀など多国間金融機関が多国間債務を公正にシェアすべきである。とくに世銀は自ら帳消しできる資金を持っている。
(3) この提案では、これからG7の中で、渋る国が出てくるだろう。ドイツ政府が多国間債務帳消しにおいて、これ以上の資金供出がないという条件を出しているということを聞いている。米政権も議会も追加の資金の拠出には後ろ向きである。

したがって英政府に対して、市民社会が支持する他の資金源を検討するように呼びかける。その多くはIMF/世銀の内部資金である。

(1) IMFの金の段階的売却。これは金市場に与える影響を最小限にすることが出来る一方、帳消し資金として300億ドルを得ることが出来る。
これは厳密に「追加の資金」とするべきである。
(2) 世銀のIBRDレザーブ/純収入資金を使う。Sony KapoorはIBRDレザーブ
と累積純収入は100億ドルにのぼると試算している。これはIDAの債務帳消しに充当できる。さらに、世銀は年間10億ドルの純益を上げてきた。これを今後10年間の債務帳消し分に充当できる。
(3) 各国の任意の資金供出を使う。英国政府のように債務帳消しに熱心な政府の拠出、金の売却、IBRD資金とをあわせると、債務帳消しの資金は十分である。
しかし、基本的に資金は金とIBRDより出すべきである。
(4) PRGFを廃止する。IMFのPRGFは低所得国にたいする資金貸付の基金である。これは途上国を含めてすべての市民社会から批判されてきた。IMFの貧困国における役割は疑問視されており、これを他のより開発志向型の機関にとって代えるべきだという意見が多い。PRGFを廃止すれば、その資金は債務帳消しに充当できる。米政府はこれを支持していることを付け加えておく。

4.長期的解決について
 英政府の提案は債務のガバナンスをどのように改善するか、債務国と債権者とのより公正な関係について、触れていない。米国ジュビリーは仲裁機関、返済拒否、不正な債務・汚い債務についての研究を現在の議論に取り入れることを提案する。

Neil Watkins
Interim Co-Coordinator
Jubilee USA Network