DebtNet通信 (vol.3 #31)  
パリクラブのイラク債務帳消し
2004年11月28日


1)イラク債務の帳消しについて

さる11月21日、パリ・クラブは、「イラク債務の80%を帳消し」にすると発表した。これは激しい議論の末にやっと決まったもので、95%の帳消しを主張する米国・英国と、50%でよいと言うフランス、ドイツ、ロシアなどとの間の妥協案であった。イラク戦争をめぐる対立を反映したものといえよう。

イラクの対外債務は1,200億ドルといわれる。このうち、パリ・クラブのメンバー国が持っているイラクの債務は389億ドルである。それを80%帳消しにするというと、非常に寛大な措置に見えるが、実際にはそうではない。

パリ・クラブは、まず2005年1月1日に、債務総額の30%を著消しにする。しかし、これは、湾岸戦争以来、増え続けてきた利息分の、しかもその一部に過ぎないのである。

次に、“新生イラク政府”がIMFの構造調整プログラムを受け入れたあかつきに、残りの債務を6年の据え置き期間付きの23年間のリスケにする。このリスケをする額が、債務の30%にあたり、これが第2次削減分である。そして、イラクがIMFのプログラムを実施して3年後に、第3次の20%を帳消しする。

このように、パリ・クラブの債務帳消しには4年かかる。この段階で、パリ・クラブの債務総額は78億ドルになる。

11月22日、パリ・クラブの80%帳消しの決定を受けて開かれたイラク国民評議会は、「サダム・フセイン時代の債務は汚い債務であって、返済を拒否すべきである」という決議を行った。「汚い債務とは、独裁者のイラク国民と近隣の国々にたいする戦争のために使われたもので、イラクの債務総額の95%を占めている」と述べた。

これは、実質的には、パリ・クラブの決定を拒否したのであった。汚い債務は、即時、無条件で帳消しにすべきだとしている。

カナダに本部を持つ「Probe International」で「汚い債務」の著者であるPatricia Adamsもサダム・フセイン時代の債務は「汚い債務」であり、「誰が貸したのか」「いくら貸したのか」「どのような目的で貸したのか」などについて、イラク国内外に明らかにすべきである」と宣言している。

2)アラファトの資金をめぐって

パレスチナ自治政府のアラファト議長の死後、彼が管理していた巨額の資金が浮上してきた。2004年11月16日の『アラブ・ニュース』は、自治政府が米国の調査会社にアラファトと彼の側近たちが所有していた銀行預金、株券、債権、不動産などについて調査を依頼した、と報じた。すでにこれら調査会社は、アラファトが過去36年間にアルファタハやPLOの名において集めた資金が、ケイマン島、ルクセンブルグ、リヒテンシュタインなどのタックスへブン、またオーストリア、ベルギー、スイス、フランス、スエーデン、ギリシア、ブルガリアなどに投資されていることを突き止めたともいう。

その額は9億ドルから50億ドルにのぼるとも言われている。

最近では、このような秘密の資金の行方をたどることは容易になった。スイスなど22カ国の政府は政治家による秘密の資金の凍結についての国際協定に署名している。