DebtNet通信 (vol.3 #27)  
アルゼンチン VS IMF
2004年4月9日

アルゼンチンは、2001年12月にデフォールト(債務返済不履行)になった。今日、キルチナー政権は、およそ880億ドルから1,000億ドルにのぼる民間債務、多国間債務の約90%を債務不払いにするつもりだ。一方、同政権は、IMFとG7政府に対して、今後の経済開発のために新しい融資を申し込んでいる。
これまでのところ、IMFや米国は、キルチナー大統領の政策に振り回されているように見える。しかし、彼らが融資を梃子にしてアルゼンチンに債務返済の交渉に入るよう圧力をかけるというオプションも残っている。どうやらアルゼンチンの債務政策をめぐって、ブッシュ政権は揺れているようだ。

2003年1月には、米国はアルゼンチンに救済融資することに反対した。しかし同じ年の9月には態度を変え、アルゼンチンがIMFなどから借りていた210億ドルにのぼる債務をリスケするようにIMFに圧力をかけた。これはIMFの内規や融資規定に反する。

5ヵ月前には、アルゼンチンは債権者たちと債務返済交渉に入ることが決まった。しかし、キルチナー政権はその交渉に全く入ろうとしなかった。そればかりか、アルゼンチンがキューバに貸していた数十億ドルの債務を放棄したのであった。

キルチナー政権は、2003年9月にIMFと交わした債権者と債務返済交渉に入るという協定を破った。にもかかわらず、米国やフランスの理事の主張でIMFの理事会はアルゼンチンに3億5,800万ドルの新規融資を決定した。これで、アルゼンチンは差し迫ったIMFや他の多国間金融機関に対する債務の返済が可能になった。

このような米国の対アルゼンチン政策の混乱は、どこからきているのだろうか。
それは、今日米国がイラク、テロとの戦い、大統領選挙、月の植民地化などといった一連の緊急課題を抱えているからであるとする。またブッシュ政権内にはキルチナー大統領をどう扱うかについて、国務省のキャリア組とネオコンたちとの間に対立がある。

ネオコンたちは、キルチナーの債務や対キューバ政策をたたくべきだと言っている。一方では、米国がすでにベネズエラやブラジルなどとの問題を抱えているので、これ以上紛争を拡大すべきでないとする意見もある。

アルゼンチンはすでに、アルゼンチン国債の700,000の保有者にたいしてデフォールトを宣言している。これを額にすると880億ドルから1,000億ドルの間となる。

キルチナー大統領は、債務は支払わないといっている。それはアルゼンチンには外貨準備がなく、また経済的安定もないからだと説明している。彼は、福祉や社会保障を犠牲にする気もなく、また債務支払いのために増税する気もない、と宣言している。

キルチナー大統領にはいまのところ好材料が揃っている。彼の政治的人気は高い。経済成長率は2003年には7%を記録した。2004年にはさらに好転すると見られている。これは中国がアルゼンチンの農産物の買い付けを増やすとみられているからだ。2003年のアルゼンチンの貿易収支は160億ドルの黒字を記録した。外交面ではブラジルのルラ大統領と親密で、国連の安保理の4年間の任期を、ブラジルが2004〜2005年、アルゼンチンが2006〜2007年と仲良くシェアすることになった。

キルチナー政権は、債務不払いからもたらされる損失を、ブラジル、中国、インドなど新興国との同盟関係によってもたらされる恩恵でもって相殺しようと考えている。