DebtNet通信 (vol.3 #23)  
エチオピアとニジェールの債務救済交渉
2004年3月13日

来る4月1に開かれるIMFの理事会では、エチオピアとニジェールの完了点(Decision Point)の審査と、債務削減措置を受けることができるかどうかについて審議を行う。これについて、日本、ドイツ、日本、それにエチオピアの最大の債権国であるロシアの理事たちが削減に反対している、という。緊急の行動が必要とされる。

1)ここで、IMF・世銀の拡大HIPCsイニシアティブによる債務削減の実績について見よう。

IMF・世銀のHIPCs適確国42カ国に対する債務救済措置は、3年間構造調整プログラムを実施して決定点(Decision Point)に達し、その後、市民社会の参加をもって貧困削減戦略ペーパー(PRSP)を作成し、3年間実施して「完了点」ではじめて本格的な債務削減がなされるという6年がかりの長い年月を経て、はじめて“持続可能な”債務になるというものである。

IMF・世銀はジュビリーの国際キャンペーンの呼びかけに対して、2000年12月末までに、22カ国(同年12月末の一挙10カ国の駆け込み施行を含む)を決定点に達したとして、債務の1部削減を行った。
しかし、2001年以降は、この拡大HIPCsイニシアティブの実施はスローダウンした。決定点については、2001年は、チャドの5月、エチオピアの11月の2カ国、2002年には、2月のガーナ、3月のシエラレオネ、の2カ国、2003年には、7月の民主コンゴ1国のみにとどまった。合わせて27カ国に上る。42か国中3分の2にとどまっている。

完了点については、2000年5月にウガンダ、2001年には、6月にボリビア、9月のモザンビーク、11月にタンザニアの3カ国、2002年には、4月のブルキナファッソ、6月のモーリタニアの2カ国、2003年には、3月にベニンとマリ、11月にガイアナの3カ国、そして2004年2月にニカラグアが達したとして、削減措置を受けた。これは計10カ国にとどまっている。

2) IMF・世銀が発表したこれまでのスケジュールによると、エチオピアとニジェールは、2003年中に決定点に達するとされてきた。
(この2カ国のほかにセネガル、ルアンダも予測されていた)

そして、IMF・世銀は、決定点から完了点にいたる間に、外的なショックが起これば、Topping Up(上乗せ)する、つまり条件を緩和することを認めてきた。

エチオピアについては、20年前にこの地を歴史的な旱魃が襲ったが、昨年さらにそれを上回る史上最悪の旱魃に見舞われた。さらに、主要な輸出品であるコーヒーが値下がりしている。にもかかわらず、エチオピアはこれから10年間にわたって、年間3,500万ドルの債務返済を強いられている。さらに、エチオピアが債務削減を受けられないと、世銀の規則では、世銀からの約束された10億ドルの新規融資も受けられなくなる。

エチオピアが完了点に達して債務削減を受ける額は7億ドルである。これは、イラクに対する寛容な債務帳消しと援助金にくらべるととるに足りないものである。

ニジェールは、ウランの産出国で、イラクのサダム・フセインにイエロー・ケーキのウランを売却したという疑いをかけられた国として知られている。勿論これは、デマであった。そして、ここ数年、ウランの価格が急激に値下がりしている。その上、ニジェールはEUからのODAを減らされた。ニジェールの債務に対するTopping Upの額は1億4,200万ドルである。さらにニジェールの債務削減総額は5億ドルである。
この2カ国にはこのような外的なショックを受けているので、Topping Upの条件があり、完了点の資格が十分にある。

3)英国のJubilee Researchのアン・ペチファー代表は、エチオピアとニジェールの完了点と債務削減措置を妨害しているのが米国、ドイツ、日本、ロシアの4カ国の理事であるとして、それぞれの政府にたいしてロビイングを呼びかけた。

これに対して、ドイツJubileeのユルゲン・カイザー代表が、ドイツ政府の関連3省と話し合いをした結果を報告している。

ドイツ政府のIMF担当者は「この問題は基本的にはIMFと世銀の意見の相違からきている。IMFの国別担当者は債務の利子率の変動が外的なショックであるとして、PRGF(旧ESAF)からの資金をもって債務削減をすべきであると主張した。彼は、これを世銀の担当者が受け入れることを望んでいる」。

ニジェールについて、カイザー代表の手紙は、さらに「ドイツ財務省は、ニジェールについてはこれ以上反対をしないと言っている。ウランの値下がりとODAが減ったこと、英国とフランスが削減を熱心に主張していること、ニジェールの構造調整プログラムの実施記録が良好であること、などを認めている」と述べた。
エチオピアについては、「IMFの方法論についてのペーパーを議論した後で、共通の戦略を出すべきであって、エチオピアにTopping Upを認める気はない」ようだと言っている。

これに対して、アン・ペチファーさんは、「IMFはすでにエチオピアとニジェールに対するTopping Upを認めるペーパーを書いている」、という。IMFと世銀にとっては、この2カ国については債務削減すべきものがない。問題は2国間の債務削減であって、これについて、米国、ドイツ、ロシア、日本が反対している、のだという。いいずれにしても、4月1日のIMF理事会で審議されるように、ロビイングする必要がある。

エチオピアとニジェールのケースは、2003年中に完了点に達するとされているルアンダ、セネガル、さらに2004年中に完了点に達するとスケジュールされているカメルーン、チャド、ガンビア、ガーナ、ギニア、ホンデュラス、マダガスカル、マラウイ、サオトーメプリンシペ、ザンビアなど10カ国の債務削減措置にも影響するであろう。