DebtNet通信(vol.3 #6)  
「ネスレ社のエチオピア債務」「南部アフリカの債務」
2003年2月6日

1)ネスレ社の対エチオピア債権
 1月6日付けの英紙『ガーディアン』にCharlotte Denny記者が書いているところによると、スイスに本社があり、日本では「ネスカフェ」で知られている世界最大のコーヒー会社でもある多国籍企業ネスレ社が、旱魃に苦しんでいるエチオピア政府に対して7,300万ドルの債務返済を求めた。
 この記事が発端となって、ネスレ社に対する抗議が殺到したため、1月23日、当面返済が迫っている600万ドルをキャンセルすることに同意した。同社に対する抗議の手紙は4万通にのぼった。1月24日、エチオピア政府とネスル社との間で、債務帳消しについての合意書が調印された。これは、債務帳消しと企業の社会的責任を求める国際キャンペーンの勝利である。
 ネスレ社の債務問題は、エチオピアが社会主義軍事政権にあった1970年代の遡る。当時、軍事政権は外国企業の資産を接収した。
 現政権は、この接収した資産の補償について、外国企業と交渉に入ったが、40件、総額5億ドルにのぼった。ネスレ社の債権というのも、これから発生したものである。
 エチオピアは、世界で最も貧しい国の1つである。過去数年間雨が降らず、20年来の旱魃に襲われた。にもかかわらず、エチオピアは昨年、1億ドルの債務返済を行った。これは政府歳入の10%に及んだ。
 エチオピアは、今年末に、完了点に達して、債務の元金の帳消しを受ける。その結果、来年からエチオピアの年間債務返済額は、3,000万ドルに減るが、それでもこの額は保健医療費の半分でしかない。昨年、子どもの半分は栄養失調であり、5歳以下の幼児死亡率は10対1であった。OXFAMのデータではエチオピアでは、1,100万人が飢えに晒されている。その人びとを食べさせるには月間7,800万ドルの資金が必要である。来年からエチオピアは、その半分を債務の返済に充てなければならない。

2)ザンビア、モザンビーク、マラウイの債務
 今日、サハラ以南のアフリカは最悪の旱魃に苦しんでいる。その中で、ザンビア、モザンビーク、マラウイは、飢えている人びとを食べさせなければならないので、今年、総額2億5,000万ドルもの債務返済をしなければならない。
 世銀は、この3国を含めて26カ国の債務中、680億ドルを帳消しにしたと言う。これは、この26カ国の債務総額の約半分に上ると言う。しかし、一方では、世銀は、その中の10カ国が、債務の非持続可能性、つまり返済不可能に陥っていることを認めている。これは、HIPCsの輸出する一次産品の価格についてのIMFの予測があまりにも楽観的であったことに由来する。
 つまり、G7が1999年6月、ケルンで公約した債務帳消しは、人びとの「Basic Human Needs」には全く関係がないということである。現在、G7、IMF・世銀は、債務国が、破産すれすれの状態で、債務返済を続けさせようとしている。ケルン合意とは、債務の持続可能性を、債務総額が年間輸出額の150%以下と決めた。
 ある情報によれば、世銀は、新しい債務の持続可能性を計算中だという。これには、これまでG7政府のほとんどが、それぞれの2国間債務の100%を帳消しにしたのだが、
この帳消しによって浮いた資金分も債務の持続可能性に入れ込む。

3)アフリカの旱魃は4,000万人を飢餓に
 1月7日、世銀は、気候変動で、アフリカでは4,000万人が飢餓の危険にさらされていると報告した。現在すでに、1,400万人が飢餓にある。これは、第1に旱魃のせいである。しかし、それだけにとどまらない。第2に貧困、第3に腐敗した政府、第4にエイズが挙げられる。地球温暖化をモニターしているIPCCは、先進国のCO2の排出が温暖化をもたらしているが、特にアフリカはその影響を大きく受けている。それは、水不足、疫病の発生、食料危機などをもたらす。また、30年に及ぶチャド、マリ、ガンビア、モーリタニアなどのサヘル地域の旱魃もまたアフリカ全体に影響を及ぼしている。
 国連世界食料計画(WFO)は、アフリカの飢餓は2004年まで続くと警告している。