DebtNet通信(vol.3 #5)  
「IMFのSDRMメカニズムについて」
2003年2月5日

IMFの国家債務整理メカニズム(SDRM)について
 前号で、IMFのSDRMについて、ペティファー&ラッファー両氏の報告から、1月22日、IMFがワシントンで開いたセミナーの議論を紹介した。しかし、何が議論されたというよりか、むしろジュビリーとして、両氏が何を述べたかかについての報告であったため判りにくい点があったと思われる。ここに1月9日付けの『ワシントン・ポスト』紙のPaul Blustein記者が記事を書いているので、それを紹介する。

「IMFは、債権者の反対を受けて、破産計画を明確にした」

 IMFは、先に、重債務国の“破産制度”を提案したが、銀行や投資家の強い反対を会った。そこで、破産計画の中で最大の対立点であったものの1つを削除した新しい提案を行った。すなわち、IMFは、債務国が債務の返済を停止(Stand-still)した後、一定の期間を経た後、債権者が債権の回収をするために訴訟を起こすことを禁止した条項を削除したのであった。
 それは、当初の提案から部分的に後退したことを意味する。それは、多くの国で会社や個人に認められているのと同じく、債務国に対しても法的な保護を与えようというものであった。ある人は、IMFが大幅に破産計画を後退させたと批判した。しかし、IMFのスタッフは計画の中には債務国を保護する条項があるので、「停止(Stand-still)条項」は必要がないと主張している。

 SDRMは、主として中所得国、市場移行国にむけられたものであり、HIPCsにたいする債務救済プログラムとは別のものである。最初のSDRM草案では、IMFが「債務国が、すべての面で返済が出来ないほど重い債務」だと判断したら、その債務国は、“包括的な停止”条項による法的なシェルターを使って、債権者に対する返済を一時的に停止することをIMFに求めることができ、その間、より“現実的な”返済方法を交渉することが出来る、となっていた。

 このスキームの運用に当っては、米国を含む多くの国の法律を改正しなければならない。つまり、個々の債権(国債を含む?北沢)保有者が、返済期限のきた債権の全額返済を求めて、債務国政府を法廷に訴え、その判決に債務国政府が従わねばならないという自動的権利がなくなる。そして、債務返済停止と返済条件の整理は、債権者の3分の2、あるいは4分の3という絶対多数が可決すれば、債務返済停止と返済条件の整理が、法的に拘束力を持つものとなる。

 わずかの例外を除いて、国際的な銀行や投資家たちは、IMFの計画が私有財産権に対する侵害であり、民間資本のフローを枯渇するとして、強く反対した。新興市場国の政府が反対したのも、同じ理由である。