DebtNet通信(vol.3 #4)  
「IMFのSDRMについてのシンポジウム」
2003年3月26日

IMFのSDRMについて

1) 昨年11月19日、IMFはSDRM(Sovereign Debt Restructuring Mechanism 国家債務再構成メカニズム)について、スタッフのペーパーを理事会に提出した。これに対して、ヨーロッパ出身の理事たち(英、独、仏、尹など)が一斉に「SDRMペーパーの中に、Stand―still(債務の支払い停止)条項が除外されていること」に抗議して、反対したという情報がイタリアのジュビリーから入った。

2)IMFは、2003年1月22日、ワシントンのIMF本部で、銀行、弁護士、判事、学者、NGOの代表などを集めてSDRMについてのセミナーを開催した。しかし、南からはメキシコ政府を除いて、ほとんど呼ばれなかった。ジュビリーから、アン・ペチファーさんとウイーン大学のクニバート・ラッファー教授が招待された。
以下は両氏の報告より抄訳
 セミナーでは、「はたしてIMFペーパーが、新しい国家破産法の枠組みであるか」について議論が交わされた。
 両氏は、第1に、SRDMペーパーは、貧しい重債務国を持続可能な、安定した国にしない。民間銀行が債務削減を行っても、なお人びとの苦しみは続くだろう。第2に、国際法上、IMFの役割が拡大するだろう。非効率な債務救済措置が続く。
 さらに、a)債務国、債権国、多国間機関、民間債権者などすべての債権者、パリ・クラブが参加した包括的な債務救済。b)市民社会の参加。の2点を付け加えた。

 
両氏の声明の要約
 IMFがSDRMについて、IMFスタッフとNGOとの間の議論をするためにこのようなセミナーを開いたのはケラー専務理事の戦略の大きな前進と見る。クルーガー副専務理事の報告によると、SDRMをめぐって、IMFと債務国、IMF理事間で意見の違いと緊張関係があるように見える。
 IMFスタッフはパーパーを発表し、これについて批判を広く仰いだ。しかし、スタッフは、批判がの激しさに驚いた様子であった。セミナー終了後、IMFの広報責任者は、メキシコ政府のAgustin Carstens副財務大臣とアン・ペティファーの2名と会見した。
 1996年にIMF・世銀がHIPCイニシアティブを発足させた時に比べて、IMFが今回、SDRMについて、このようなセミナーを開いたことを進歩だと見る。
 SDRM策定に当ってIMFスタッフが批判に応え、改善を行った。IMFペーパーにはSDRMプロセスについて、透明性を保証している点を評価する。
 貸し借りが正当に行われることを保証するために「自然法」が援用されるという提案に賛成する。
 IMFスタッフは、SDRMの策定と独立した判事の任命について国連国際貿易法委員会(UNCITRAL)と共同した。もともと、このことはAFRODADの提案であったが、IMFが国連の専門性を認めたことを評価する。
 IMFが、ペーパーの中で、「仲裁」という言葉をしばしば使っている。これは、とくに第三者と仲裁法廷の任命の時に使われていることを評価する。
 以上のことを述べた上で、両名は、ペーパ−について、重大な留保をせざるを得ない、と述べた。
 両名の重大な留保の中で、1つ、セミナーの基調報告者であったGlenn Hubbard氏と同意見のものがあった。彼はブッシュ大統領の経済シモン委員会の議長である。Hubbard氏は「債務危機の解決には、債権者、債務者とグローバル納税者という3者がいる」と述べた。彼は、「債権者のHold―out(留保)が法的なメカニズムを正当化するほど大きいこと」を疑問視した。彼は、「第1歩として、任意の機関を設立する」ことを提案した。Hubbard氏の演説は、IMFのスタッフの席にショックが走ったようだ。
 メキシコのCarstens副財務大臣も又、SDRMペーパーについて、とくにメキシコに投資のフローが影響をうけることについて、重大な留保をした。
 ペティファーとラッファーの両名は、IMFのSDRM草案は1980年代の「失敗したブレイディ(Brady)プランに類似性を見つけた。つまり、民間債権者だけが、債権を減らさねばならない。しかし、民間債権者が大きな削減をしても、債務国の債務危機は解決しない。IMFの提案では、元本保証のない債権者は、「現金と新しい国債の混合を受け取る」と書いてあるが、もともと外貨のない重債務国は、IMFから融資を受けることになる。その結果、ますます、債務救済はなくなり、IMFの権力が強まる。
 IMFが「債務の持続可能性レベル」を唯一決定する。これによって、必然的に債務救済額が決定され、さらにIMFが債務国の経済政策を決定する。その結果、本来、債務国が提出すべき「Composition Plan」をIMFが起草することになる。これが債務国と債権者との債務救済交渉の際の基礎になる。
 IMFは「債務持続可能性」を策定できる。これによって、IMFを危険に陥らせるような債務削減を免れることができる。セミナーで明かになったことは、債務国が合意した解決が、IMFのスタッフにとって「余りにも寛大である」と判断された時、すでに債務国と債権者が合意したにもかかわらず、その解決を反故にすることが出来る。これはIMFが自らの債権を守る法廷での判事の役割を演じることになる。勿論、これはこれまで、IMFがやってきたことである。