DebtNet通信(vol.3 #18)  
エビアン・サミットについて
2003年5月24日

6月1〜3日、フランスのエビアンで開かれるG8サミットに対して、フランスならびにヨーロッパの社会運動は20〜30万の大規模なデモを準備している。
このデモの目的は、G8の非正当性を暴露、糾弾するところにある。

しかし、予断は許さない。
エビアンというところはレマン湖畔の小さな町で、スイスのジュネーブとローザンヌに隣接している。G8たちとそのお供たちは、警察、軍隊、空軍に守られて、エビアンの贅沢なホテルに泊まる。
さる4月8日、フランスとスイス政府はG8サミットについての協力協定を結んだ。2国政府は全ジュネーブ湖全域を警戒地域に指定した。スイス側は5,700の軍隊と4、650の警察を動員する。その費用は3,000万ドルにのぼる。フランス政府はエビアンでのデモを禁止し、すべての不審者を排除する。これは、エビアンの住民にも適用される。たとえば、市役所に行くのにも許可がいるし、街中を歩くのも制限される。

エビアン市内でのデモが不可能なので、デモはジュネーブ、ローザンヌ、あるいはフランス領のAnnemaseで行われる。スイスとフランスの国境地域の社会運動は、サミットの第1日目の6月1日、ジュネーブとAnnemaseを同時に出発し、両国の国境に向かって歩き、国境で合流する、という計画を立てている。
イタリア、ドイツ、英国、スペイン、その他のヨーロッパ諸国からの参加者に対して、3つのキャンプ地が準備され、寝ること、食べることを保証する。
この日の前には、ワークショップや会議が企画されている。議題は「アルゼンチン危機」、「中東情勢」、「金融危機」、「武器産業」、「情報戦争」などに亘る。

エビアンサミットは、イラク戦争を巡って、G8間での対立後に開かれる。ブッシュが参加することで、ヨーロッパの反戦運動に火をつけ、再び、反戦運動を盛り上がらせることになる。
 これに関して、ブッシュとスイスのPascal Couchepin大統領とのジュネーブ空港での会談が反G8運動の抗議で、取りやめになったことは注目すべきことである。

G7は1975年、石油ショック直後、フランスのジスカールデスタン大統領の呼びかけでサミット会議が始まった。最初はG5、そしてイタリア、カナダ、さらにソ連崩壊後はロシアが加わった。事実、G8サミットは第3世界の新国際経済秩序や一次産品の値上げ要求に対抗するものとして、はじまった。ロシアは、サミット前夜に開かれる閣僚会議には出られない。
G8は非公式のクラブである。その決議には効力も、拘束力もない。国連やWTOに対抗出きる事務局もない。しかし、1980年以来、このクラブはネオリベラルなグローバリゼーション政策を推進し、世界貿易を拡大させ、民営化、政府予算の削減を実施してきた。これらをIMF、世銀、WTOなどを使って、行ってきた。

デモの組織団体の1つである「ジュネーバ社会フォーラム」のマニフェストは、「実際には、G8は世界政府の役割を担おうとしている。しかし、何の資格もないのだ。それゆえ、G8は非正当なものである。G8のネオリベラルな政策は、富みの集中を増加させ、労働法を破棄し、雇用と生活水準の不安定性をもたらし、文化的疎外、環境破壊をもたらす。
一方、G8は、テロとの闘いを口実にして、資本投機、マネーラウンダリングと闘うことを拒否している。
G8は戦争、軍国主義、弾圧を正当化している。G8は貧困と闘うと言いながら、貧困国の債務の帳消しを拒否し、受け入れられない条件をつけている。IMF政策はアルゼンチンを破産させた。WTOの貿易自由化は南の国にますます不利になっている。エイズ対策に必要な資金供与を渋っている。G8は環境を守る手段を講じていない、と述べている。

これまでG8サミットは28回開かれたが、15回も反対デモが起こっている。フランスでは1989年、1996年リヨンなどでデモがあったが、1998年バーミンガム、1999年ケルンサミットでは債務帳消しを要求する大デモが起こった。
2001年7月には25万人がジェノバ・サミットでデモをし、1人の死者が出た。
今年のデモの共通スローガンは「もう1つの世界は可能だ」で、平和的、祭り風に行われるだろう。