DebtNet通信(vol.3 #16)  
「IMF・世銀・WTOの協調会議に対するNGOの声明」「国連CSD会議の報告」
2003年5月13日

1)IMF・世銀・WTOがジュネーブで政策協調会議を開くにあたって

NGOの声明(抄訳)
 (英文の全文はwww.coc.org/resources/article/displayを参照のこと)

 5月13日、IMF・世銀とWTOの3事務局の幹部職員が、ジュネーブで会議を開いた。これは、3国際機関としてははじめてのことで、3者間の政策のさらなる調整、協調をはかるものである。これは、途上国にとって、憂慮すべきことである。
 なぜなら、
 すでにIMF・世銀は、これまで途上国において、貿易と金融の自由化、規制緩和、民営化、そして緊縮財政など問題の多い政策面での“改革”を推進してきた。
 その目的は、途上国の従来の民族主義的経済政策を改め、世界市場に急速に統合化させることにあった。その結果、途上国の経済は停滞し、不安定化し、所得の格差が増大した。
 これにWTOが加わることによって、貿易の立法や、紛争解決機関による経済制裁などを通じて、すでにIMF・世銀の失敗した政策改革が加速されるであろう。
 
国際機関の会合の議題

食糧安保
 これまで、IMF・世銀は、貿易障壁、国内で生産される食料品への補助金、地方の農業振興プログラムなどの撤廃を融資の条件にしてきた。
 北の先進国に対しては、そのような条件を付けて来なかった。さらに、WTOの農業協定は、北の先進国が生産コスト以下の安い価格で余剰農産物を途上国にダンピングし、巨大多国籍農産物輸出企業の市場拡大を許してきた。
 その結果、途上国では産業の要である農業部門が壊滅的打撃を受けた。

基本的なサービスへのアクセス
 IMF・世銀は、公共サービス部門の自由化と民営化を、融資の条件にしてきた。途上国では、しばしば、これら部門への外国企業の参入、商業ベースでの価格決定は、貧しい人びとにとって値上げにつながり、公共部門のサービスを受けられなくなる。
 WTOでは、現在、貿易とサービス協定(GATS)交渉において、これら基本的なサービスの自由化と民営化を推進する交渉ルールが議題になっている。GATSは、また、サービスの提供者が社会開発、労働と人権、消費者と環境の統合性などを保護する公共政策や規制措置などを撤廃して、ほとんど企業が負担しなくてもよくなる国内法の制定を推進している。

外国投資家の規制についての国家の権利
 IMF・世銀の融資条件には、借り入れ国は、国内経済、環境、労働者の権利などを保護するための外国投資家の活動制限を撤廃することが入っていた。
 1994に締結されたWTOの貿易に関する投資方法(TRIMs)は、外国投資家を規制するこれらの措置を撤廃することが入っていた。現在EU、日本、オーストラリアがWTOに提案しているは投資と金融の完全な自由化である。これは、途上国政府は外国企業に対して完全に無力となり、国内政策が資本の自由な動きを阻むということになれば、途上国政府は企業から法的な訴訟を受けることになる。

IMF、世銀、WTOのガバナンスの問題
 IMF、世銀、WTOは、すでに破綻し、誤った政策を是正するのではなく、「経済成長」、「均衡した開発」などという間違ったアプローチを推進している。そして、依然として、非民主的な、説明責任のない方法で運営している。その結果、彼らの正当性が疑われている。
 IMF、世銀の投票制度は先進国に完全に偏っている。またこの2つの機関の会長はアメリカ人かEUに限られる。理事会は非公開であり、議事録も公開されない。さらに融資の書類は理事会が決定した後でしか、議会に公開されないし、全く非公開のときもある。
 このような秘密主義は、借り入れ国の市民社会や議会の参加を不可能にし、ドナー国側でも、税金がつかわれているにもかかわらず、知る権利が奪われ、参加を阻まれている。
 WTOはIMF、世銀よりも民主的だという。理論的には、すべての加盟国は平等な投票権をもっている。しかし、選択的、非民主的なプロセスが、それを阻んでいる。投票にかけられることはほとんどない。そして、貧しい国にとって先進国の市場と援助に依存している以上、交渉の場で、コンセンサスに異議を唱えることはありえない。WTOのパワーポリティックスにより、政策決定と指導部の選択はインフォーマルなプロセスに委ねられている。

社会正義のキャンペーン・グループは3機間の協調路線を弾劾
 このような誤った協調路線ではなく、民主的で正当な3国際機関となるための新しい選択をすべきである。
 少なくとも、3機間の投票制度、指導部の選出プロセスを民主化すべきであるし、機関自体の透明性と公開性を高めるべきである。
 市民社会と議会が自らの政府の貿易と金融政策を決定することに参加する権利は保証されるべきである。
 貿易と経済政策は、社会、開発、環境の問題を抜きにしては作成できない。したがって、市民社会は、このようなことを無視して行われる3機間の協調政策を非難する。

Center of Concerns
International Gender and Trade Network
Institute for Agriculture and Trade policy
Bretton Woods Project
ほか40団体が署名
2003年5月12日

2)第11回国連持続可能な開発委員会(CSD)の報告

 ヨハネスブルグ・サミット後、はじめてのCSDの会議が、ニューヨークの国連本部で、4月28日〜5月9日、開かれた。
 CSDは、リオの地球サミット後、アジェンダ21の実施をモニターする機関として、ECOSOCの下に設立され、毎年、4〜5月に2週間にわたって開催されてきた。
 今年は、南アフリカのMoos環境大臣が議長となり、40カ国が参加した。
(1) ヨハネスブルグ・サミットの決議に含まれていた、5年前にバルバドスで開かれた小島嶼国会議の行動計画の見直し会議「バルバドス+5」の準備を議論した。
(2) CSDを2004年〜2017年まで開く。2年毎にテーマを決めて議論する。テーマはヨハネスブルグ・サミットの実施計画に沿ったもの。
2004〜5年のCSDのテーマは、水、衛生、人間居住である。
(3)CSDの新たな役割と機能
   これは、ヨハネスブルグ・サミットの実施計画の第11章に記載された事項だが、  
   これまでCSDの役割と機能は曖昧であった。
   ヨハネスブルグ・サミット後に開かれた第57国連総会では、CSDはミレニアム開 
   発ゴールと並んで「持続可能な開発の最も主要な要素」とすることに合意を見た。
   CSDの目標として、ムーサ議長は、貧困化、飢え、疫病をCSDの3大課題とする、
   と述べた。
   議論のなかでは、CSDの課題は、貧困根絶、非持続可能な消費と生産、天然資源の
   保全であるという意見が大勢を占めたが、EUはこれに企業の責任と社会的責任を
   加えることを主張した。
   CSDの機能としては、モニター機能か、単なる報告機能かに分かれ、一致を見なか
   った。
CSDの役割と機能については、6月に開かれるECOSOC会議に回された。