DebtNet通信(vol.3 #11)  
「英蔵相のIMF改革案」
2003年3月27日

英ブラウン蔵相のIMF改革の提案

4月、ワシントンでのIMF・世銀合同春季会議に向けてさまざまな動きが出ている。4月はじめには、G7の蔵相・中央銀行総裁会議がワシントンで開かれる。
IMF・世銀総会といっても、加盟国の蔵相・中央銀行総裁全員が集まる本会議はお祭りに過ぎず、その前に開かれるG7会議ですべてを決める。
またIMF独自に問題についてはIMFの理事国24カ国のIMFC(国際通貨金融委員会)が開かれ、そこですべてが議論され決められる。IMFCの議長は英国のブレア首相のライバルであるゴードン・ブラウン蔵相である。
 このIMFCの会議が、3月末にロンドンで開かれた。そこに英国の「IMF改革案」が出された。
 ブラウン蔵相の改革案の下敷きになったのは、3月4日、ワシントンの国際経済研究所で、ブラウン蔵相のチーフ経済顧問であるEd Ballsが行ったスピーチである。その全文は
http://www.iie.com/publications/papers/balls0303.htmに入っている。Ed Ballsは単なる顧問ではなく、ブラウン蔵相の政策決定に最も影響力を持っている。

Ed Ballsのスピーチの要約:
英国は、IMFC議長として、IMFの政治的な機能を弱め、かつ当該国の経済政策に介入しないようにすることにつながるような「改革」を提案する。その理由として、IMFがアルゼンチンとトルコ危機を回避することが出来なかったことを挙げている。
IMFは、加盟国に対して、中央銀行に独立の機能を与えるように指導しているが、IMFの理事会もまた、政治から独立すべきである、とEd Ballsは言った。IMFは、貸し付け機能と加盟国の経済状況のモニター機能という2つの機能を分けるべきである。IMFの2つの機能の分離は、ウォールストリートの「投資」と「商業銀行」の機能を分けているようでなければならない。IMFのモニター機能については、今までよりよりよく作業を行い、危機の兆候に対して警告を発するべきである。これがアルゼンチン危機から学んだ教訓である。

ロンドンでのIMFC会議ではこの英国の提案はあまり歓迎されなかった。しかし、いくらかの小さな修正が加えられただけで、ワシントン会議に出されることになった。

ドイツのジュビリーは、この英国提案、つまりIMFの融資機能とサーベランス機能の分離について、これまでジュビリーが、「債務の持続可能性について、貸し方であるIMFから独立した機関によって評価をせよ」と要求してきたことに潜在的につながる、と判断して、重要視している。そして、IMFCのメンバー各国政府の反応を知りたがっている。