DebtNet通信(vol.2 #9)  
「IMF・世銀春季会議の報告」
2002年4月25日

2002年4月、IMF・世銀春季会議の開催

 IMF・世銀の春季会議は、G7の蔵相・中央銀行総裁の会合とコミュニケに続いて、それぞれ20カ国からなる世銀の「開発委員会」、IMFの「国際通貨金融委員会」の合同会議が開かれる。これは、IMF・世銀の理事会のメンバーと同一である。
 したがって、EURODADは両委員会の「声明」を分析した。春季会議の主な議題は、途上国の債務のリスケ・メカニズム、世銀のIDAをグラントにするという米国の動議などであった。
 これらの議題をめぐって米国とEUが対立していた。春季会議では、両者間の溝はかなり埋まり、合意に達したが、すべて資金の手当てができず、実施の見こみはない。

1) 途上国の債務リスケのメカニズム(SDRM)
 アルゼンチンの債務危機の解決法として、IMFのアン・クルーガー副専務理事が出していた「国家破産法の適用と国際法廷による債務処理(Statutory Approach)」に対して、米国のオニール財務長官は、「市場による解決(Market-based Approach)」を主張していた。今回、オニール長官がIMF案に賛意を表明した。その結果、以後、こにお2案を同時並行的に追及して行くことになった。

2) グラントがローンか?
 米国が、世銀のIDAを90%グラントにするという動議を出していた。EUは反対していた。EUの中でも、ドイツとフランスはグラント率を10%以下だと主張していたが、ワシントンでは18%まで歩み寄った。米国はこれを21%に増やすことを狙っている。
一方、米国案に対するEUの反対のリーダーであった英国は、「もし信託基金のすべてがHIPCSイニシアティブの資金として使われた場合」という条件付きで、10%以上にすることを認めた。
 一方、24カ国の中の途上国グループを代表して、南アフリカのマニュエル蔵相は、IDA資金がグラントで使われた場合、「IDAがなくなる」ことを心配している。

3) 選択性
 オニ―ル長官は、世銀が合意したローンを段階的に拠出する際、米国の新しい開発援助政策(モンテレイでブッシュが発表した)に基づいて、基準をより厳しくするべきだと主張したいた。EUはこれに対して、「貧しい国ほど、ガバナンスは低いので、開発融資を受けられなくなる」と危惧の念を表明していた。委員会では、「良い政策」を基準とすべきだということに合意した。

4) 債務削減
 HIPCs3について、提案するものはいなかった。さらに、「モンテレイ合意」にある、「ミレニアム・ゴールを達成するために債務の持続可能性を、将来見直す」という文言も「声明」には入らなかった。
 しかし、今年のG7サミットの議長国であるカナダのマーチン蔵相から「債務削減は6月にハリファックスで開かれるG7蔵相会議の中心的議題となる」という言質をNGOは得た。
 世銀は、HIPCSイニシアティブによる「達成点」に達した国は8カ国あるが、「完了点」
に達した時の債務は「持続可能でなくなる」ことを認めている。
 「完了点」に達した5カ国の中で、ボリビアとウガンダの債務は持続可能ではない。そして、これらの国により以上の債務削減措置が取られる可能性はない。
 「達成点」に達した国は、債務の返済額の削減を受けているのだが、その中の7〜8カ国は、IMFが課した改革のプログラムの基準を満たしていないと言う理由で、その削減を停止されている。しかし、それは、たとえば「ある産業の民営化」と言った改革プログラム中の1〜2の項目の実施が遅れただけのことである。
(EURODADのニュースより)

 4月20日、世銀は、『World Development Indicators 2002』を発表した。この中で、世銀は、中国とインドを除き、多くの途上国が2015年までに「ミレニアム・ゴール」を達成できないと、分析している。
(Jubilee Plusのニュースより)
(この世銀報告(英文)がご入用の方は北沢までお申し付け下さい)