DebtNet通信(vol.2 #52)  
「日本政府が債務帳消しを発表」
2002年12月23日

日本政府は川口順子外相の名で、さる12月10日に、これまで、日本だけが実施してきた、途上国の債務を40年賦の長期にリスケをした上、これを毎年一旦返済させ、次いでそれと同額の無償援助をし、これを商品輸入に充当させるという「債務救済無償援助スキーム(TDB)」を廃止し、2003年4月から、日本が重債務貧困国(HIPCs)、及びHIPCs以外の低開発国(LDCs)の中でTDB対象国になっている国(バングラデシュ、ネパール、ラオス、イエメン、ボツワナ)など、32カ国に持っている円借款、つまりODA債権を100%放棄すると発表した。

その内容は、直ちにHIPCsの債務の全額を一挙に帳消しにするのではなく、IMF・世銀の拡大HIPCイニシアティブの枠組みで実施する、つまり、これまで、IMF・世銀が構造調整プログラム(彼らの言う経済改革)を忠実に実施し、市民社会が参加して「貧困削減戦略ペーパー」を作成し、それをIMF・世銀が承認した段階、つまり、「完了点」に達した国に限られる。これはウガンダ、ボリビア、モザンビーク、モーリタニア、タンザニア、ブルキナファソの6カ国に留まる。ちなみに、IMF・世銀の拡大HIPCイニシアティブのプロセスは非常に遅れており、「完了点」に達している筈の8カ国が、削減のためのファンドが足りないと言う理由で、作業に入っていないのが実状である。

円借款を供与してきたのは、旧OECF,、現在の日本国際協力銀行(JBIC)である。JBICがすでに不良債権化している6カ国に対する債権を放棄することになる。これを、政府が一般会計(税金)からJBICに、「交付金」として支出し、穴埋めをする。外務省有償資金課の説明では、JBICは、これまで20年前に供与した円借款の返済を得ており、これは、利子が高い。その結果、JBICは、かなり剰余金を得ているので、交付金はあまり多くならない筈だ、ということであった。

しかし、日本政府は、12月22日来年4月を待たないで、IMF・世銀のHIPCs適格国ではあるが、拡大HIPCイニシアティブの交渉にさえ入っていないミャンマーに対して、TDBスキームを廃止し、2,735億円の債務のうち、1,500億円もの巨額の債権を放棄すると発表した。残りの1,235億円は、これまでミャンマーが毎年の返済を滞ってきた分で、これは、IMF・世銀の拡大HIPCイニシアティブの枠組みで実施される、と言う。
勘ぐれば、日本政府の{TDBスキーム}の廃止と債務帳消し措置は、ミャンマーの巨額な債務帳消しが目的であった、とも言える。

今回の日本政府の債務帳消し措置は、日本ジュビリー2000のキャンペーンが、1998年10月に始まって以来、小渕首相、森首相、小泉首相と3代に及ぶ首脳に粘り強く要請してきたものであり、1999年6月、ケルン・サミットでG7首脳が合意した事項であり、さらに、2000年6月、日本ジュビリー2000と外務省経済局長との合意に基づき、ジュネーブで開かれた国連社会開発サミット+5で、日本代表がコミットメントを発表してきた。その実施に、小渕首相が参加したケルン合意以来、4年に近い歳月がかかった。この間の重債務貧困国が蒙った苦しみを考えると、強い憤りを感じる。

にもかかわらず、これは、喜ばしいことである。これはジュビリー2000キャンペーン以来DebtNetの運動の成果である。1998年10月、日本ジュビリー2000が目指した目標は、一応達成された。

12月17日、DebtNetと外務省経済局、有償資金課との話し合いの結果を含めて、事務局の方からDebtNetのメーリングリスト、ホームページ、さらに印刷物の形で、広く内外に知らせる。