DebtNet通信(vol.2 #48)  
「ルサカでアフリカのジュビリー国際会議」
2002年10月31日

2002年10月10日、ルサカでの記者会見

 2002年10月8〜9日、ザンビアのルサカで、アフリカ8カ国(ケニア、モザンビーク、マラウイ、ザンビア、ジンバブエ、アンゴラ、南アフリカ、ウガンダ)のジュビリー組織の代表、それに北のパートナー・ジュビリー(ベルギー、英国)とブラジルが参加した44人の国際会議が開かれた。会議のテーマは「債務についての債権者側のアレンジメントは現状を変えるか?」であった。
 その結論は、IMF・世銀のHIPCイニシアティブは、途上国の債務救済を行う筈であったが、失敗した。代わりに、HIPCs(重債務貧困国)は貧困層のニーズを満たすためのわずかな資金さえも債務返済に充てなければならない。
 HIPCイニシアチブの最大の誤りは、貧困層の膨大なニーズに応えるための社会的手段を講ずるべきなのに、経済的手段に重点を置いたためである。
 さらに詳しく言えば、HIPCイニシアティブの失敗は、

1) 債務の持続可能性の計算が、貿易が増加するなどという非現実的な経済成長の予測に基づいていたこと
2) IMF・世銀がHIPCイニシアティブでもって債務国に押しつけた条件が、すでに不信
任になった構造調整プログラム(SAP)の主な内容を再演したものであること
3) HIPCイニシアティブの実施の過程で起こっている影響の評価がないこと
4) IMF・世銀などの国際金融機関と債務国政府が、優先すべき措置、運用、資金の支出などについてのグッド・アカウンタビリティを実施していないこと、などに原因する。

 ワシントンで開かれたIMF・世銀年次総会での合同理事会では、「HIPCイニシアティブの改革には全く興味なく、専ら、HIPCイニシアティブの実施に使える信託基金を増やすことにのみ議論が集中した。これは、まさにIMF・世銀がいつも言っている「2015年までに貧困を半分に減らす」というミレニアム開発ゴール(MDGs)を達成するための債務救済という現実的なアプローチではない。
 HIPCイニシアティブがもたらした初等教育の就学率が増加、水資源へのアクセスの増大などいくつかの成功例があるとはいえ、HIPCイニシアティブの下での債務救済は全体として人びとに恩恵をもたらしていない。これには多くの例が挙げられる。 
 例えば、ウガンダは先進国の債権者が言うような成功のショウケースではない。HIPCイニシアティブで債務救済を受けてからウガンダの債務は3回も非持続可能に陥ったし、現在HIPCイニシアティブ以前と同額の債務を返済している。
 同様に、モザンビークは債務救済を受けた以後、より以上を借りている。モザンビークの予算の60%は外国からの融資に依存している。
 ザンビアは、予算の中で、教育と医療保健費以上の額を債務返済に充てている。
 会議では、ケニア、南アフリカ、ジンバブエという重債務で貧困問題が深刻な3カ国がHIPCsに認定されていないという問題が新たに提起された。

会議の声明文
1) 国際金融機関と債権国に対して;
 非持続可能な債務からの解放を謳った現行のHIPCイニシアティブがその目的を達成していないことに責任を負い、それを正直に認めること
 債務の持続可能性を、国際社会が採択したMDGsを達成できる途上国政府の能力に結びつけるオルターナティブなアプローチを追求すること
 債務帳消しが、事実上、貧困根絶プログラムの資金源としては、もっとも早く、もっとも有効な方法であることを認めること
2) 先進国の債務帳消しキャンペーンに対して;
 債務問題は解決しておらず、貧困根絶を可能にする持続可能な開発の主要な阻害要因となっているので、北の政府や市民が債務帳消しキャンペーンを忘れるようなことをないようにすること
 とくにIMF・世銀の理事国では、MDGsの達成に基づいた債務の持続可能性に焦点を置いた債務帳消しを行うよう政府に圧力をかけること
 すべての債権者、債務国に受け入れられる正当な債務の解決を保証する「独立で、公正な、透明性のある仲裁システム」を政策提言すること
 南の関心と問題が効果的に北のキャンペーンに反映されるために、南のジュビリーのパートナーとコンタクトを取り続けること、
3)アフリカの政府に対して;
 現行のHIPCイニシアティブが持続可能でないばかりか、大多数の人びとの福祉に役立っていないという事実を認めること
 アフリカの優先課題を達成するために、外国からの提案に応じるのではなく、自身のイニシアティブを確立することができるように、交渉能力を高めること 
 すべての債務救済によって生じる資金が貧困根絶プログラムに充当され、また将来無責任な借り入れをなくすため、透明で、アカウンタブルな参加型のメカニズムを確立すること
 国家プログラムの真のオーナーシップを確立するために、市民社会の経験と分析に耳をかたむけること
4 ) アフリカのジュビリーに対して;
 貧しい人びとに対する我われのコミットメントに基づいた債務帳消しキャンペーンへの動機を再確認すること
 債務帳消しの正当制を要求して、最も幅広い人びとを動員するキャンペーンを再確認すること
 情報と資金のシェアについて、ジュビリー間でより有効に協力すること
 債務救済で浮いた資金が、PRSP、あるいは他の貧困根絶プログラムに充当されるのを保証する、透明で、アカウンタブルな、参加型メカニズムを設立するよう、政府に対して要求すること
 現行のHIPCイニシアティブの運用が適切に行われていないことを示す確実な分析を行うこと
 6カ月というとくべつな評価の期限付きで、このプラン達成についてのモニターを行うこと