DebtNet通信(vol.2 #43)  
「WSSD(ヨハネスブルグ・サミット)報告その6
2002年8月31日

8月30日(金)

これまで、パートナーシップの会合が続いていた総会場では、午前と午後、各種国連機関、地域機関、NGOネットワークなどが、短い演説を行った。

1. 閣僚レベルの会合 正午から夕刻まで

議長は、Valli Moosa南アフリカの環境観光相
 これは、事務(官僚・国連派遣の外交官)レベルの「ウイーン・スタイル」ではなく、通常の国連の議事方式で、「ヨハネスブルグ方式」と呼ばれる。
 まず、閣僚会議が「何を議題にして審議するのか」というところで揉めた。結局、議長裁定で、議題の中で「衛生」「エネルギーへのアクセス」「消費と生産」「再生可能なエネルギー」「エネルギーの補助金」「天然資源」「京都議定書」「生物多様性」についての「数値と期限のターゲット」について審議することになった。それも、新しい文書を作成するのではなく、“原則”に同意するために議論することになった。
 したがって、閣僚がそれぞれ、自国の政策と立場を主張し、結局、何らの同意がなく、1日が暮れた。
 午後9時に閣僚会議は再開した。「消費と生産」の章に関連して、「共通だが、差異のある責任」について、議論が続いた。結局、通訳の就労時間が終わる午後11時に、議論を停止した。土曜日の午前に再開する予定。

2.「ウイーン方式」午前

議長はDumisai Kumalo南アフリカ国連大使
まず、第5章「実施手段」のコンタクト・グループの報告
議長はカリブ海のアンチグア・バルブ―ダのJohn Ashe国連大使だが、途上国よりのスタンスではないようだ。
「資金」については、合意を見た、と報告した。これは、途上国側がモンテレイ「合意」を飲んだためで、「国連最後のサミット」と言われるWSSDで、先進国は南北問題の解決にこれまで以上の「新しい、追加の資金(債務帳消し、0.7%のODA拠出の期限、為替取引き税・炭素税など)を出さない」ことになった。
「貿易」「グローバリゼーション」については、合意していない個所が残った、という報告であった。
続いて、ウイーン方式の会合は;
第2章「貧困根絶」では、「世界連帯基金」について、合意に達せず。
第4章「天然資源の保全と管理」では、「2015年までに、資源の枯渇傾向を逆にする」について、合意に達せず、閣僚会議に送ることになった。
 「エコ・システムとPrecautionary(予防的)アプローチ」については、閣僚会議に送ることになった。
「戦略の統合」について、閣僚会議から、新しい草案が送られてきた。それを検討するという理由で、会議を中止。

3 . 第10章「制度的枠組み」のコンタクト・グループの会合

ナイジェリアとスエーデンの国連大使が議長になって、完全に非公式で、1日中、会合を続けた。『Earth Negotiation Bulletin』の記者が取材を止めたのは、土曜日の午前零時半で会ったが、まだ続いていた。

廊下での噂話し
事務レベルと閣僚レベルの会合が、それぞれ異なった方式で始まってので、議事進行に大きな混乱が起こった。例えば、「天然資源」の章のぱら23について、同意がなく、この個所を事務レベルに差し戻した。しかし、事務レベルの官僚たちは、自国の閣僚に聞いてみなければ、合意、不合意部分がわからない、と言い出す始末。このような、両レベルのコミュニケーションと調整がつかず、とうとう、議長がこの個所の議論を停止した。閣僚の方が、決定権を持っている筈なのに、むしろ閣僚会議が混乱に拍車をかけている。
「生物多様性」について、そこからのベネフィットを均等にシェアする国際機構」について、途上国の中の「生物多様性大国グループ」が出現し、この問題について、「政治宣言」草案を提出した。「遺伝子資源」と「生物多様性条約(CBD)の下でのベネフィットのシェア」との不可分の関係がある。そこで、この途上国の生物多様性大国とアフリカ・グループとの密約があるのではないかという憶測が生まれた。

8月30日午後2時半、


NGO声明  
グリーン・ピース・インターナショナル Remi Parmentier
アムネスティ・インターナショナル Folabi Olagvaju
地球の友マレーシア Meena Raman
消費者インターナショナル Bjuarne Pedersen
グローバリゼーションのインターナショナル・フォーラム Victor Menotti

要約
―先進国も途上国もリオでの公約を尊守せよ
―社会、環境問題を貿易に従属させている潮流を変える
―実施計画に目標値と期限を入れよ
―浪費的な生産と消費を削減せよ
―政府、市民社会、企業間のパートナーシップについての透明な範疇を設立せよ
―企業のアカウンタビリティについて明確なガイドラインを設けよ
―ヨハネスブルグ・サミットのような政策決定プロセスに参加、透明性、アクセスを保証せよ

 これで、インターネットの情報による私のヨハネスブルグ・サミット報告を終わります。
 月曜日、9月2日から首脳会議が始まります。首脳たちは、私のコペンハーゲン・サミットでの経験では、2国間の会談に忙しいもの、演説を終わったらすぐに飛んで帰国するもの、などがほとんどで、多国間交渉をする場ではない。また閣僚(ハイ・レベル)たちも、2日以後も残れる大臣はまれです。したがって、ウイーン方式の事務レベルの会議をだらだらと続けるか、さっさと妥協して終わりにするか。
 私の感想では、バリの準備会議が失敗に終わった原因であった南北間の「資金」と「貿易」 「グローバリゼーションの評価」などが争点であると思っていましたが、どうやら、途上国がモンテレイ合意とWTOを受け入れたようで、もはや主要な対立点ではないようです。
 むしろ、環境保護を政策としているEUと米国、日本、カナダ、オーストラリアなどとの間で、「エネルギー」、「消費と生産」、目標値と実施期限の設定など先進国問題をめぐって対立しているようです。これは、EUと米国の経済の競争力をめぐる争いが背景にあります。