DebtNet通信(vol.2 #40)  
WSSD(ヨハネスブルグ・サミット)報告 その3
2002年8月28日

8月27日


2つのラウンド・テーブル(パートナーシップ)が開かれた。
「農業」
「その他の項目」

1.「世界実施文書」草案の審議

ここでは、“ウイーン・スタイル”ということで、非公開になっているらしく、『Earth Negotiation Bulletin』も、発言者の国名を伏せて、記述している。その結果、発言内容から推測して、EU、あるいは米国、日本の発言なのか、G77の発言かを推測する以外にない。つまり、「ウイーン・スタイル」が国連会議に導入されたため、国連は透明性と民主主義を失ったことになる。

第3章 消費と生産

 Facilitator(多分国連スタッフ)が、「再生可能なエネルギー資源についての期限付きのターゲット(期間と数量値を記述したもの)」について、(1)「2010年までに、少なくとも15%」、(2)「先進国が、2000年のレベルをもとにして、2010年までに2%増加させる」を併記した草案を提出した。
 この草案をめぐって、先進国内、途上国内ともに意見が割れた。
 「ターゲット」を付けることにに反対した先進国(複数)は、これは「国内政策の柔軟性に委ねるべき」だと主張した。一方、途上国(複数)は「経済に悪影響を与える可能性がある」「むしろエネルギーに対するアクセスの方が優先順位が高い」と主張した。
 先進国の中で「ターゲット」に賛成した国(複数、多分EU)は「経済に悪影響」について疑問を付け、「先進国がターゲットを付けた方が途上国に有利だ」と反論した。
 途上国(複数)は「より野心的な期限付きのターゲットを要求し、エネルギーの自立化」を強調した。
 合意に至らず。
 「エネルギーに対する補助金を段階的廃止するタイムテーブルについての国内政策」について、多数の国が、「これはあまりにも規範的であるので、削除すべきだ」と主張した。その結果、より緩やかな表現に代えることに、合意を見た。先進国(複数、多分EU)は「第9章の実施手段の中に特別な行動を導入する必要がある」と再度、主張した。実施についてさらなるステップを明確化するために、「第9回CSDの枠組み、あるいはたの勧告を参照にする」ことに不一致。
 「パートナーシップの協力を推進する」について、インフォーマルな協議では、上記の表現について、おおよその合意を見たが、まだ不一致がある。
 「化学物質の健全な管理」についてのインフォーマルな協議のFacilitator(国名不明)は、「コンセンサスに失敗した」と報告し、ウイーン・スタイルの会議に差し戻した。途上国が2020年という期限付きのターゲットに合意できなかったからであった。一方先進国側は、「ターゲット」に賛成する用意があると応えた。先進国の数カ国が、ターゲットの期限を修正することを提案した。ある先進国は、2020年という中期的ターゲットを、長期の目標値に代えることを提案した。
 しかし、ウイーン・スタイルの会議でも、化学物質の使用、生産を、大きく減らす、あるいは人間の健康や環境に有害にならないようにすることについての文言に合意できなかった。「アジェンダ21にすでに記載された化学物質の健全な管理を再記述することに合意を見た。
「重金属が引き起こすリスクを減らすために、適切な国際的措置」についての草案の表現に不一致。
 途上国は、この草案が「UNEPの水銀についてのグローバルなアセスメントの結果を予断するのではないか」と憂慮した。

第4章 天然資源の保全を管理

 この章について、南アフリカがFacilitatorとなった小グループの協議後、ウイーン・スタイルの会議では、長い議論があった。最初のパラについて、不一致。
 議長、代表ともに数えきれないほどの修正提案を行った。しかし、ついに合意に達せず。途上国側は、「資源の枯渇傾向を逆にする」という表現に反対した。しかし、議長が、「逆にする」の前に「ように努力する」という言葉を挿入するという提案をした後では、賛成した。多くに代表が「期限ターゲットとエコシステム的アプローチ」に言及した。一方、たの代表たちは、「天然資源の枯渇全体を一括して議論することはできない」 
このパラでは「エコシステム的アプローチを入れることは、不適当である」と主張した。
 結局、「天然資源の枯渇を逆行させる」「2015年というターゲット期限」「エコシステム的アプローチ」「戦略とプログラムを一致させる」などの個所について、先の小グループの協議に差し戻すことに落ち着いた。 
 「漁業」については、最終草案がまとまった。それには、途上国の言う「遠嶽国の権利」「途上国の沿岸国の特別なニーズ」などの個所を含む。長い議論の末、「沿岸国の権利、義務、権益」に十分に考慮すべしという国連海洋法条約を尊重する」ことに合意した。しかし、国連海洋法条約に参照するべきかどうかについて、反対する国がいる。また、「途上国の特別なニーズに考慮する」については合意した。しかし、冒頭の前文の中の「均等な漁業」に付いていたブラケットは外された。

第8章 アフリカ

 「NEPADに記載された、“向かう20年間に、アフリカの人口の35%がエネルギーにアクセス出来る”としたターゲットを達成するというアフリカの努力を支援する」ことに合意。
 「資金を動員することにアフリカを支援する」「温暖化の悪影響を調整する」「極端な天候異変」「海面の上昇」「気候の異変」「温暖化の国内戦略の開発」などの項目が合意項目に含まれる。
 「普遍的な人権の尊重についてのアフリカの努力を支持する」という草案について、南北間の合意に達していない。アフリカの「ヘルスケアとサービス」のブラケットについて、途上国側は、第3章(健康)を参照することを主張した。一方、先進国側は、アフリカの章に特記することを主張した。(これはHIV/エイズに関連している)
 「持続可能な観光」については、合意。これには、「生物多様性についての地域協定、つまり、アフリカの生物多様性条約」「生物多様性の持続可能な利用」「「遺伝子資源の使用から来る利益の正当な、均等なシェア」などの項目が含まれている。
 しかし、「コミットメント」「実施義務」などについての表現については、不一致。

2.コンタクト・グループI 制度的フレームワーク

 ここでは、第10章を審議する。スエーデンとナイジェリアが司会を務めた。ここでは、しばしば、小グループに委任され、その審議が休憩に入ると、コンタクト・グループの会議が開かれる、ということが連続した。しかし、ほとんど合意に達しなかった。
 「法の秩序」「人権」について、長い議論が続いた。一方では、「法の秩序と機関を強化について、短くすべきだ」と言えば、他方では、「人権を切り離すべきだ」と言う。審議は続けられることになった。
「持続可能な開発の社会的側面」「労働権についてのILO宣言」の項目についてのさまざまな修正表現が提案されたが、合意に至らず。
 あるグループは「国際的なグッドガバナンス」について新たな草案を対案した。それには、「腐敗や不正な資金についての条約」「多国間主義を支持」などが含まれていた。しかし、この草案についての実質的な審議はなかった。「WSSDのフォローアップにおけるECOSOCとモンテレイ合意の関連」についての代案が提出されたが、議論は膠着状態。
 「パートナーシップ」についての議論は、あるグループは短くすることを提案。「パートナーシップは政府の公約を代替できない」と主張した。他のグループは、この項目を、CSDの項目に移すことを提案。また、あるグループはパートナーシップのフォローアップをモニターする項目を支持した。「パートナーシップについては結論はなし。

3.コンタクト・グループII 実施手段

 「資金」、「貿易」、「グローバリゼーション」についての司会のAshe大使の草案を議論した。Ashe大使は、合意に達していない個所の審議を閣僚レベルに送ることを提案。これに対して、ある国は、それはウイーン・スタイルの会合をバイパスすることになる、と反論した。
 この章の前文について、ある国が「多くの資金の必要性を認める」という個所について、資金の「流れ」を削除し、これを途上国に「対して」と「の中で」に代えることを提案した。司会が、「途上国の中で、新たな、追加の資金」の表現を提案した。これに対して、もとの提案国は、資金を「特に、途上国に対して」という原案で良いと言った。
 「環境に優しい技術の移転」について、前記と同じ国が、「移転」を「へのアクセス」に代えることを提案した。司会は、アジェンダ21を引用しながら、この問題は閣僚レベルの
会合に委ねるべきだと主張した。
 途上国のグループは、「各国がその開発について第1義的な責任を負っている」という表現に反対した。
「共通だが、差異のある責任」という表現については、リオ原則のコンタクト・グループの審議に送られた。
「資金の効率的な使用を動員」について、ある国(多分米国)は、司会が「透明な、参加型の、アカウンタブルなガバナンスを確立し、マクロ経済政策を強化する国を奨励する」という「重要な文言を故意に削除した」と指摘した。さらに「モンテレイ合意のガバナンスに関する項目に沿った修正案を出した。
 あるグループは、「持続可能な開発に沿った、外国直接投資と貿易保険を奨励する」という修正案を出した。ある国が、「金融機関に関連した個所は法的な問題を内包している」ことを指摘した。最終的に「持続可能な開発に“役立つ”外国直接投資と貿易保険」という表現で合意した。

廊下での噂話し

 ウイーン・スタイルの会議が進行する一方で、真の協議は、「直接交渉」、あるいは「秘密の会議」で進行しているのではないかとの、不安が一般の代表たちの間で高まってきた。8月27日午後9時が審議の終了時間に定められていたにもかかわらず、第10章のコンタクト・グループの審議は続行したのが、その証拠だという。いくつかの項目がパケージとなって、(8月28日から始まる)閣僚レベルの会合で、トレードオフとして、妥協が計られるという噂が、ウイーン・スタイルの会合に広がっている。
さまざまなNGOコーカスが、「貿易」「エネルギー」「温暖化」「再生可能なエネルギーの時期と数値目標についての情報収集に奔走したいる。NGOが交渉の部屋に入るのは、難しく、また政府代表団からの情報収集も進まない。しかし、「ウイーン・スタイルの会議室が大きなホールに変えられるというニュースはNGOにとって有利だ」とあるNGOは語った。