DebtNet通信(vol.2 #3)  
「ドイツ開発相、通貨取引税の研究書を発表」
「ナイジェリアがIMF協定を破棄」
2002年3月13日

訃報

「トビン税」の提唱者であったジェームズ・トビン博士(元イェール大学教授)が、3月11日(月)に亡くなりました。享年84歳でした。1981年にノーベル経済学賞を受賞されました。

1) ドイツ開発省が「通貨取引税(CTT)」研究書を発表

 ついに、ドイツ政府が「CTTは実行可能である」という研究レポートを発表した。これは、G7の中では、カナダ政府に次ぐビッグ・ニュースである。3月18〜22日、モンテレイで開かれる国連開発金融会議の争点の1つであり、CTTの導入を推進してきたNGOにとって嬉しいニュースである。
 Ms. Wieczorek-Zeulドイツ開発相は、2月20日、ベルリンで開かれた会議で、この報告書を発表した。英訳は、3月12日に公表された。
その全文はhttp://www.weedbonn.org/ffd/index_e.htmに掲載されている。
 報告書を書いたのは、元IMFのスタッフで、ドイツ人金融経済学者のPaul B Spahn
であった。
 「CTT」はトビン税の概念を超えるもので、G7以外の市場経済移行国、新興市場国、開発途上国、さらに、巨大な為替市場以外の先進国においても課税可能であり、追加の税収が政府に入ることになる。このような自動的な課税によって、投機的な資金バブルや攻撃を予防することが出来る。さらに、すべての国がCTTを導入する必要はない。例えば、OECD加盟国、あるいはEU加盟国などが、一方的に導入してもよい。

2) 英国下院で超党派の「CTT推進議員連盟」

 2月25日、英国下院では、超党派6党150人の議員から構成された「CTT推進議員連盟」が結成された。これには、数人の元閣僚、有力議員が参加している。議員連盟は、労働党のハリー・バーネス議員によって「ゴードン・ブラウン蔵相がCTT導入に向けて積極的な措置をとる」という動議を提出した。
 CTTの導入によって、「1日に1兆ドルという実体経済に関係のない投機マネーを抑制でき、1994年のメキシコ、97年のアジア、98年のロシア、99年のブラジル、2001年のアルゼンチンの危機を防止することが出来、年間500億ドルの追加の収入が見こまれる。これをもって、グローバルな貧困根絶に貢献できる」と述べた。
 ブラウン蔵相は、国連開発金融会議に向けて、「CTTを含めた革新的な手段を講じる必要」を認めており、最近発表した財務省の報告書では、「途上国に対する現代のマーシャル計画」を説いており、そのなかでも「CTTを貧困根絶の資金として、可能な新しい資金源である」と述べた。
 この議員連盟の結成を推進したのは「War on Want」というNGOである。

3) ナイジェリアはIMFとの協定を破棄

 3月5日、ナイジェリア政府は、IMFによる非公式のモニター実施協定を破棄し、国内で制作した経済プログラムを実施していくと発表した。
 ナイジェリアは300億ドルの対外債務を抱えており、IMFの救済融資を必要としていた。IMFはその条件として、経済改革を押し付け、その執行について、昨年、モニターしてきた。しかし、IMFは、ナイジェリアの2002年度予算についてかどの支出だと批判した。
 ナイジェリア政府の収入は石油輸出に依存しており、9月11日事件以後、40%減となった。また、経済危機の進行とともに、失業が増え、それが政治的、宗教的な暴力を生み出している。3年前、オバサンジョが大統領に就任して以来、すでに3,000人の犠牲者が出ている。
 しかし、ナイジェリアはオバサンジョ大統領が民主的に選出される前の15年間、軍事政権のもとで経済が破産状態にあった。2000年、2001年の経済成長率は1991年以来の目覚しいものがあり、IMFはこのような点を見落としている。

4) エクアドルでラテンアメリカ、アフリカのジュビリーが会合

 3月9〜12日、南米のエクアドルのグァヤキルで、「Jubilee Movement International」に参加しているエクアドル、ペルー、アルゼンチン、ガーナ、フィリピン、ブラジル、英国、ドイツ、オーストリア、スペインのジュビリーの代表が、「債務危機の解決のために国際的な仲裁の枠組みの協定」について国際会議を開いた。アルゼンチンのマリオ・カフィエロ議員が基調報告を行った。
 会議は、「FTAPに基づく独立債務法廷」の設立について合意した。
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