DebtNet通信(vol.2 #29)  
「米国の世銀IDA融資に対するロビイ活動」
2002年8月22日

世銀のIDA増資に対する米国のロビイ活動

 米国では、環境、開発援助のNGO、キリスト教会、AFL-CIO、グローバル正義運動などが幅広い国内連合を設立して、世銀、IMFに対する米国の政策について、議会に活発、かつ効果的なロビイ活動を展開している。
 今日、世銀は、最貧国に対してソフト・ローンを供与するIDAに対して、先進国に対して増資を要求している。米国では、このIDA増資については、議会の承認が必要である。 
 そこで、国内連合は、米国はIDA増資の拠出金を出す場合は、IMF、世銀の権力を削ぐような政策を採るよう要求している。具体的には、世銀の米国の理事は、(1)重債務貧困国の債務帳消し、(2)構造調整プログラムについての社会、環境のアセスメントを行う、(3)世銀のプロジェクト融資について、事前に有効性の検証を必要とすること、(4)労働権を損なうことがないこと、(5)水道料金を上げることにつながらないこと、(6)農薬の使用を増加させること、(7)煙草産業の民営化を行わないこと、などを列挙している。
 国内連合は、議会に対して、これらの項目を夏休み明けの議会において審議される「IDA拠出法」案の中に書きこむことを要求している。
 国内連合は、これまでのロビイ活動で成功を収めてきた。2000年度には、国内連合のロビイ活動の結果、議会が、「IMF、世銀の米国の理事が初等教育と基礎保健について利用者負担制度を実施することにつながるプロジェクトに対して融資する時は、反対投票しなければならない」という法律を通過させた。これは、国内連合のロビイ活動の勝利であった。
 しかし、実際にIMF、世銀の政策を担当するのは、財務省である。財務省は当該法律の
文言を故意に誤読して、とくに基礎保健について、議会が望んだような政策を打出さなかった。一方、世銀は、これまで15ヵ年にわたって、学校を有料にする政策を進めてきたが、それを改正し始めた。たとえば、最近タンザニアでは、学校の有料制が廃止され、その結果、150万人の子どもが就学することが出来た。