DebtNet通信(vol.2 #27)  
「米国は最貧国か?南から北への資金の流れ」
2002年8月22日

米国はHIPC?―貧困国が繁栄国に資金援助

1) 米国の経常収支の赤字は、グローバリゼーションを推進

 1960年以来、米国の経常収支の増大する赤字は、金融のグローバリゼーションの主要な推進力となってきた。米政権は、この赤字を埋めるために、積極的に国際金融の自由化(グローバリゼション)を推進してきた。グローバリゼーションは、多国籍企業や新しい技術の開発によって起こされたと言われているが、これは第一義的な理由ではない。
 今日、資本の自由化は、―1920年代、1930年代のように―再び、金融の不安定化と国際緊張を増大させている。すべて、金融の自由化が民主的、非民主的政府ともに、政策決定の独立性を失わせている。
 米国は、重債務国でありながら、グローバル経済を支配している。しかし、重債務国であるにもかかわらず、経済調整もせず、政策の独立性も失っていない唯一の例外的な国である。 

2) 米国はHIPC(Heavily Indebted Prosperity Country―重債務繁栄国)

 世界で最も豊かな国である米国は、2.2兆ドルの対外債務を累積している。この額は、インド、中国、ブラジルなどの大債務国の分を含めた全途上国の債務総額2.5兆ドルにほぼ等しい。
 言いかえれば、3億人弱の米国民は、途上国の50億人とほぼ等しい額の対外債務を負っていることになる。
 さらに、言いかえれば、1人の米国民は、7,333ドルの対外債務を負っているのだが、途上国では1人が500ドルの対外債務を負っている。
 さらに、途上国は、毎年3,000億ドルの債務返済によって、経済が枯渇しているが、米国は対外債務では同じ額でありながら、年間200億ドルしか返済していない。
 米国民は消費狂いである。その結果、4,450億ドル、GDPの4%に上る史上最大の経常赤字を出した。この赤字は最近、毎年50%の率で増えている。エコノミストは、2006年には、7,300億ドルになると予測している。
 毎日、20億ドルの赤字を出しており、その上、20億ドルの資本流出が加わり、米国は毎日、世界中の貯蓄から40億ドルを借り入れている。

3) 米国の赤字―つまり米国民の高い消費水準―を埋めているのは、貧困国

 米国の赤字は、(1)東アジア、とくに日本、中国、シンガポールの勤勉な貯蓄からカバーされている。(2)フランスやスイスなどの国から借り入れている。
 もっとひどいことには、米国の赤字は、(1)貧しい国から逃避してくる資本によってカバーされている。(2)ドル高の時に、ドル保有を強制された国からカバーされている。
 ドルを保有するため、貧しい国は18%もの高い利子で米国のドルを購入した。それを3%の利子という米国の国債を購入するという形で米国に貸している。グローバリゼーションによってもたらされた金融不安定化によって、GDP比では、アジアは14%、アフリカは7%のドル保有を強制されている。反対に、米国は、GDPの1.3%のドル保有である。
 そのようなドル保有がもたらす途上国の巨額のコストは、過去10年間でGDPの24%にのぼる。これは成長を著しく阻害している。
 米国に流入する資本は、(1)低利子を可能にし、その結果、米国民の借り入れコストを低くしている。(2)米国のドルの価値を20%ほど膨張させた。その結果、米国は世界中から20%安くものを輸入している。
 もし資本逃避がなければ、アフリカ25カ国は債務国ではなく、債権国になるだろう。
 アルゼンチンのような国は、政府は外貨を、単に資本がアルゼンチンから、ウォール街、ロンドンのシティ、チューリッヒ、マドリッドなどに 逃避するために借り入れている。
 これは資本の自由化の下では、合法的な行為である。
 しかし、アルゼンチンの貧しい人々は、巨額の公的債務に苦しめられている。アルゼンチンは、1,400億ドルの公的債務を抱えている。これは、アルゼンチンから逃避した資本の1,300億ドルにほぼ等しい。

4) 次ぎの危機は?

 米国の赤字は持続不可能である。ここで、いつ、どのような“調整”が起こるかという問題がある。
 いつ、どのような調整がおこるかについては、多くの議論がある。確かなことは、米国のこの持続不可能な債務を“調整する”時、最も大きなコストを支払うのは、これらの国の貧しい人々である。いくらかの国では資本の流入が減るだろう。
 エクアドルのように、ドル化した国では、米国が資本誘致をするために利子を上げるため、 高い利子を支払わねばならない。
 その他の国は、貿易条件の悪化に悩まされる。とくに輸出が困難になる。
(英国のJubilee Plusのアン・ペチファー代表がWeb Pageに掲載した論文の抄訳)
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